速力が戦術に及ぼす影響砲熕の射程が極めて短かった帆装時代においては、2~3ノットの優速は攻撃力を集中するためにその価値は極めて大きな意義を有するものでした。 近代の砲熕の射程と威力の増進は、戦術における速力の価値を大きく下がることになりました。 とは言っても、いまだに多少の利益はあるのであって、それは次の点においてです。 ア.優速な艦隊は、挑戦又は避戦の選択の自由を有する イ.優速な艦隊は、比較的有利な位置を占めることができる ウ.優速な艦隊は、自己の失錯を回復し、また敵の失錯に乗する機会を得る エ.優速な艦隊は距離選定の自由を有する ア.は寧ろ戦略上のものと言えますが、戦略と戦術とは明確な区別ができるものではなく、ここでは戦術上のこととして掲げています。 そしてこの利益は優速な艦隊が有する唯一の絶対的なものであって、これに対してイ.以下は相対的な利益に過ぎません。 したがって、イ.以下は常にその利益を享受し得ると考えるのは大いに誤りと言えます。 そもそも勢力が均衡する艦隊どうしの対抗においては、速力の2~3ノットの優勢は何ら勝敗に影響することがないことは戦術上の原則であって、僅か1回の兵棋演習でも直ちにそれを証明することができるものです。 初版公開 : 08/Apr/2018 |