総 説砲装の問題が単に戦術上の要求と技術的なレベルによってだけで解決されるものではありません。 一国の戦略及び海軍の政策に関連するところが極めて大きいので、安易に論断し難い大問題と言えます。 この大問題について、砲戦術上から考慮する必要のある事項は次のとおりです。 ア. 砲装の根本は同一の価格に対して最大の戦闘力を得ることが理想であり、時代と国情に応じて様々な型式となるのは当然のところです。 それ故に、これらの諸型式を比較研究するためには時代の思潮とそれぞれの国情を考える必要があります。 イ. 砲装について、まず最初の問題は大艦か小艦かということです。 後者の主張については3つの理由があります。 ウ. 砲装の問題は直ちに砲種の問題となることは論を俟ちません。 砲種は砲装を定める基礎となるものだからです。 砲種をどのように選ぶべきかは、砲それ自身の威力と最近の射撃術の発達とに鑑みるは勿論のこと、過去の海戦における戦訓を尊重することが肝要となります。 エ. 一艦の攻撃力、防御力、及び速力の3者は互いに密接な関係があり、そのいずれかでも優大とすれば必然的に他の一つ又は二つを犠牲にしなければなりません。 このため砲装の問題は同時に装甲、速力の問題と相関連してきます。 以後、本項においては主として戦艦の砲装について解説することとし、その他の艦種については簡単にその要領を述べるにとどめ、これについては後の大正10年頃の砲戦術のところで詳しく解説することを予定しています。 初版公開 : 25/Mar/2018 |