本項では、旧海軍の砲術におけるお家芸とも言える飛行機観測を利用する場合の距離修正法について、次の順序で説明します。 なお、この修正法の基礎となる飛行機観測の精度については 『射法の要素』 中の 『飛行機観測の精度』 の頁を参照して下さい。
1.初弾に対する修正旧海軍においては、飛行機による初弾の弾着観測による距間量 l (エル) に対して l +x の修正を行うこととされてきました。 この場合、x の量は通常 100程度が適当とされています。 ただし、l は固有誤差を修正した後の距間量とします。 (以下同じ) しなしながら、昭和10年代になると飛行機観測の精度が向上したことに伴い、昭和12年の 「艦砲射撃教範」 の改定により、初弾偏倚量が小さい場合には観測距間量をそのまま修正し、大きい場合には観測距間量に 100〜200 を加えた量を修正 することとされました。 下図から分かるように、目標存在公算が最大となる点は初弾の弾着から l だけ離れた位置に存在します。 したがって、次弾の夾叉公算を最大とするためには l の修正を行えば良いことになります。 しかしながら、飛行機観測による通報は毎斉射必ず得られるものとは期待できませんので、本射第1弾が初弾と同方位弾とならないようにすることは、以後の射弾指導からは有利なことです。 したがって、同方位弾とならない公算を相当大きくする必要があります。 今、大口径砲について射距離 30000m場合に、l の各種値に対して種々の修正量を採用した時に夾叉弾を得る公算及び同方位弾とならない公算を算出すると次の様になります。
この表から判断すると、各距間量を通して l +(50〜100) 付近の修正が、上で述べた方針に適合することが分かります。 したがってこのことから、 L=1.3 x l とすれば妥当な修正量が得られると言えます。 最終更新 : 05/Jun/2015 |