2.測距射法の前提条件測距射法の照尺決定要領の概要は既に 1.で説明したとおりですが、弾着観測によって適当な修正を行い、これによって測距中心誤差だけ修正を行うことが出来たとすると、射弾は測距散布誤差だけ目標の前後に散布することになります。 もちろん、夾叉することも多いと予期されますが。 したがって、射心移動がある場合には、測距散布誤差と射心移動の合併誤差の分だけ射弾は目標の前後に散布することになります。 そして、この合併誤差が散布界の半量以内であれば、測距中心が実距離と一致した場合には毎斉射夾叉弾となります。 もちろん実際には測距中心と実距離とが一致するようなことは到底望み得べくもありませんので、射弾指導上、少なくともこの合併誤差により同一方位 (遠又は近) の偏位弾が2回続いて生起することがないように期待することになります。 そのためには、下表で示すように、測距散布公誤と射心移動公誤との合併公誤が戦闘公誤の2倍以内であれば、同方位弾が2回連続して生起する公算が12%以下 (1斉射3弾)、あるいは10%以下 (同5弾以上) となりますので、ほぼこれを満足できることになります。
この合併公誤が戦闘公誤の2倍以内であると推定される射距離は、『射法の要素』 で使用した各種の旧海軍史料により、次のとおりとなります。 大口径砲 : 21000m そしてこれが旧海軍における測距射法実施可能な限度とされていました。 しかしながら、旧海軍が予期する砲戦実施距離はこの限度を遥かに超えていましたので、旧海軍においては測距射法が等閑視され、変距射法が最良のものとして尊重された原因 がここにあります。 最終更新 : 01/Jun/2015 |