6.試射法の決定1.〜 5.項までの検討によって、試射の方法は次のように決定できることになります。 (1) 試射を行わない場合 試射を行わずに、初弾から本射を開始する場合については、上記 1.(2) 項で説明したとおりです。 (2) 初弾が全近 (全遠) の場合 まず同方位弾とならない公算が 90% (場合によっては80%) 以上となる修正弾を発射して、目標の捕捉に努めなければなりません。 この時の濶度が捕捉濶度よりも大きくなる場合には、適当な濶度で2〜3弾打方を行う必要があります。 修正が捕捉濶度又はこれより小さい濶度で済む場合には、捕捉濶度の修正を行って本射 (急斉射) に移ることができます。 この方法を 初弾観測急斉射 (略して 初観急、又は 初観急射 ) と言います。 2〜3段打方の場合には、目標を捕捉した弾着を得次第、その前弾着との中間 (折半) 照尺に戻して本射に移ります。 またもし最終弾着でも目標を捕捉できなかった場合には、引き続き最終弾着を初弾と見なした初観急又は初観2段の要領により試射を継続します。 この要領を経過図的に一例を図示しますと、次のようになります。
上の図を見て、目標を捕捉した場合の本射への移行時の修正量について、何故濶度 (図の場合は 600) の半量、即ち 「下げ9」 (6+3) 及び 「下げ3」 にならないのか? という疑問を持たれた方もあるかもしれません。 これについては、次項の 「本射の要領」 中の 「試射から本射へ移行時の修正量」 で説明します。 (3) 初弾が全近 (全遠) であるが、目標存在公算最大点の有効弾獲得公算が相当に大きい場合 まずこの “相当に大きい” というのがどの程度のことを指すのかということですが、旧海軍ではこれを 30%以上 としていました。 この様な状況は、近距離で、かつ初弾精度が良好な場合が考えられます。 この様な場合の試射法には、次のものが考えられます。 (それぞれ一例として、捕捉濶度が 600mの場合の号令の例を示します。) (ア) 目標存在公算最大の点に対して、直ちに本射に移行する方法 ( 「下げ3、急げ」 ) (イ) まず反方位弾を期待する修正弾を発射し、その弾着を見る前に目標存在公算最大の点に戻して本射に移行する方法 ( 「下げ6、次ぎ」 (発射) 「高め3、急げ」 ) (ウ) 上記 (イ) の逆の方法 ( 「下げ3、次ぎ」 (発射) 「下げ3 (又は2)、急げ」 ) (エ) 夾叉公算を著しく低下させない限度において反方位弾を期待する相当大きな点を求めて、その点に対して直ちに本射に移行する方法 (即ち、上記3つの折衷案) ( 「下げ4、急げ」 ) これらの何れの試射法を用いるかは、その時の射撃指揮官及び射撃関係員 (特に測的及び幹部員) の練度、天候、視界の状況などに応じて決定する必要があります。 (4) 試射法の総括 以上検討してきた結果から、各砲種ごとの各射距離に対応する最も適切な試射法を纏めると、次の表のとおりです。
もちろん、単純にこの表によって試射法を決定するのではなく、射撃指揮官及び射撃関係員 (特に測的及び幹部員) の練度、天候、視界の状況などに応じて決定する必要があることは言うまでもありません。 ただし、徒に自己の技量を過信して巧緻に走ったり、あるいはまた必要以上に慎重となって有効弾を得るのに多大の時間を要するなどは、射撃指揮官として戒めるべきこととされています。 最終更新 : 25/May/2015 |