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射法の概念 |
水上射撃の射法
艦艇における 「対水上艦艇射撃」 (通常これを単に 「水上射撃」 といいます) は、射撃艦も敵艦もそれぞれにある針路、速力で移動しながら行われます。
したがって、両者の間の距離 (実距離) は、刻々と変化します。 もちろん両者が全くの同針路、同速力の時は変化しませんが、この様なケースはむしろ例外中の例外であることは簡単にお解りのことでしょう。
このため、まず測距離を元に計算した照尺距離で試射を射撃を開始して、可能な限り早く適正な照尺距離 (=適正照尺、有効弾を得られる射弾を発射するための照尺に調定する距離) を掴み、次いで発砲 (斉射) の度に敵艦に有効な射弾を与えられるように適正照尺を維持するためには、この刻々と変化する距離を照尺に調定しなければなりません。
この 適正照尺を如何に早く掴み、それを維持するか (変化を如何なる方法で処理するか) ということが水上射撃における 「射法」 の中心となるもので、この処理方法の違いによって旧海軍では次のように区分しました。
終戦前までには旧海軍でも電探装置を用いた 「電探射撃」 が実施されるようになりましたが、この場合でも水上射撃において使用される基本的な射法はこの4つのものでした。
対空射撃の射法
対空射撃では、上記の水上射撃に対して、次のような特性があります。
1.測的、未来位置決定の段階において、理論が複雑で正確な値を掴むのが困難である。
2.目標の対勢の変化が急激であって、攻撃の連続性に乏しい。
3.各種指揮兵器 (射撃指揮装置) の計算方式・機構の違いによりその誤差の出方が大きく異なり、これによって弾着の偏りの状況が違い、また複雑な様相を示す。
このため、次のようなことが伴います。
1.可能な限り自動的、連続的に目標を測的し、未来位置決定を行う射撃指揮装置が求められる。
2.弾着の偏りを観測しても、水上射撃のようにそのまま無条件には利用できない。
以上のことから、旧海軍における対空射撃の射法は、水上射撃とは全く異なる形となったのは自然の成り行きです。
即ち、使用する指揮兵器 (射撃指揮装置) の方式によって、射弾の精度をある程度予測することが可能ですので、その精度に応じた対策を考えることによって、それに 適した射法が考案 されることになりました。
旧海軍において採用された対空射撃の射法は、次の3種類に分類されます。
終戦までに、これらのうち本来は対空用ではない射撃盤を用いた射撃盤射法は全く顧みられることがなくなり、その換わりに対空用の指揮兵器の発達に伴い、使用可能な指揮兵器の面からと、それが使用する基準測的諸元の面との2つの面から、次のような射法の分類となりました。
使用指揮兵器により |
高射機射法 |
全量射法 |
使用基準測的諸元により |
距離射法 |
高度射法 |
そして、この2面からそれぞれの指揮兵器に適した射法を選んで、その射法をその指揮兵器の基本射法としました。 例えば、「高射機距離射法」 と言うようにです。
さらに、目標の運動によってその基本射法では対応できない場合には、応用的な方法を用いて対応しました。 この場合、これを一括して 「応用射法」 と呼んでいました。
(注): 「実距離」 「照尺距離」 など用語の意味については 「射撃理論」 及び 「射撃関係用語集」 の項を参照して下さい。
最終更新 : 17/May/2015
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