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対空射法 (3) |
「全量射法」 の概念
旧海軍における対空射撃の全量射法は、昭和12年改訂の 「艦砲射撃教範」 において、次のとおり規定されています。
全量射法は指揮官自ら対勢を判断し、その変距及び苗頭の変化を修正に加味して照尺量を定め、行うものである。
初照尺距離は、測距 (目測距離) に対して、測距時より弾着時迄の変距量の修正を行う他、近対勢に応じ約20秒間の変距量を修正し、近弾を得る如く定めるものとす。
初苗頭は対勢を見越してこれを定める。 之がため簡単なる苗頭算定図表を準備し置くのが便である。
距離修正の要領は、対勢の変化に伴い、測距離が概ね照尺距離に合致しようとするときに、対変距修正量に約15秒間の変距量を加えた量を修正する。
上下、左右の修正は、対勢に応じて見越修正を加味するを要する。
これは、指揮兵器を全く使用しないことを前提とした全量射法であって、少なくともこのようなものは 今次大戦が始まって以降は実用性が無くなった ことは明らかです。
このため、終戦までには、対空射撃における全量射法とは射撃教範規定のものを意味するものではなく、高射器使用に比べればレベルは低いものですが、ある種の指揮兵器を使用して実施する
距離全量射法 を意味する ようになりました。
即ち、的針・的速式高射装置、あるいは 環型照準器 を利用した射法などです。
これらの指揮兵器や環型照準器を使用する場合は、距離全量射法は、調定した的針・的速が実際と一致していれば (推定に誤差がない場合) 正しい上下、左右見越を計出するので、後は距離だけの問題となります。 したがって、この距離を目標が近対勢の場合には近方向で待ち受けていれば、いつかは距離が一致する時が来るはずです。
この 距離が一致した時に命中弾を得るようにする射法 がこの 距離全量射法 です。
勿論、この射法では距離が一致する機会は期待することが出来ますが、その前提となる的針・的速が間違っていたならば上下・左右偏差が生じますので、命中弾が得られないことは言うまでもありません。
最終更新 : 17/May/2015
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