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水上射法 (1) |
「変距射法」 の概念
刻々と変化する射撃艦と目標艦との距離 は、発砲の都度測距儀で測った距離を使用するのではなく、 「距離時計」 に距離とその変化する割合 (=変距率) を設定して作動させ、それが指示する距離の値を使用して射撃を実施するのが 「変距射法」 です。
つまり 「距離時計」 とは、測距儀などで測定した距離を基に、それを測定又は推定した変距率により時間の経過に従って刻々加算又は減算した値を表示する機械装置で、後の
「射撃盤」 「距離苗頭盤」 などでは全てその中にこの距離時計の機構が組み込まれています。
「変距率」 とは、一定の時間単位で自艦運動により生じる距離の変化 (=自変距) と目標艦の運動により生じる距離の変化 (=的変距) の合計であり、通常はこれを単に 「変距」 と言います
したがって、射撃艦の速力 (=自速) 及び射撃艦から見る目標の方位 (=方向角) に加えて、目標の針路 (=的針) と方位線とのなす角 (=方位角) 及び速力 (=的速) を知ることが必要になります。
言い換えるならば、「変距射法」 においてはこの 的針・的速の正確な測定が鍵 であり、これに基づく 「変距」 を作図や手計算ではなく、短時間に、かつ可能な限り正確に求めようとするものが 「変距率盤」 です。
そして変距は距離の変化する割合ですから、これを照尺距離として使用する場合には 「変距量」 という距離の変化量 (距離差) に換算する必要があります。 この換算を作図や手計算で行っていたのでは、とても実際の射撃の役には立ちませんから、このために
「距離時計」 が必要になるのです。
したがって、旧海軍における近代射法の起源 が、「測距儀」 の採用だけではなく、この 「距離時計」 と 「変距率盤」 の2つの採用によって初めて可能 となったことが理解頂けると思います。
つまり、「測距儀」 「距離時計」 及び 「変距率盤」 の3つをもって、近代射法誕生の 「三種の神器」 といわれる由縁です。
「変距量」 は、厳密に言いますと、射撃艦及び目標艦ともに直進する場合でも時間の経過とともに (対勢の変化に伴い) 変化するものです。 このため本来ならば距離時計に調定する変距も刻々変更しなければなりませんが、水上射撃においては対空射撃の場合の様には対勢の変化が急激ではないので、実際の射撃ではそれ程頻繁に変更する必要はありません。 ただし、「射撃盤」
などでは自動的に処理さるようになっています。
最終更新 : 17/May/2015
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