全量射法



本項では、旧海軍の代表的な射法である変距射法及び測距射法に対して、それらを実施するための射撃指揮兵器が全能発揮できない場合、あるいは十分な射撃指揮兵器が装備されていない小型艦艇において実施する 全量射法 ついて、次の順序で説明します。

なお、全量射法の概要については既に 『射法の概念』 の項で説明しておりますので、まずそちらを参照して下さい。



   1.初照尺の決定法  ← 現在の頁
   2.対変距修正量
   3.命中主義と局限主義
   4.修正の具体例




1.初照尺の決定法



全量射法は、変距射法や測距射法のように射撃指揮装置や指揮兵器が十分に活用できない場合が前提であるので、射撃指揮官は初照尺の決定においても、これを簡単・迅速に実施しなければなりません。

しかしながら、弾道修正について初速差や大気密度に対する修正は事前に計算しておくことができますが、自速に対する修正や距離見越に対する修正(的速射程差)等はその時の対勢によって変化します。

このため、初照尺の決定は次の要領で行なわれます。


   初照尺 = 測距離 + 測距中心誤差修正 + 初速差・大気密度修正
           + (合成変距 x 測距から弾着までの経過時間) + 視風力射程差



自速、的速、真風力に対する射程差の修正は、相対運動として考える場合には


   合成変距 x 飛行秒時 + 視風力射程差



とすることができますので、測距儀による測距瞬時から発砲までの経過時間 (t1) の距離変化は 合成変距 x t1 ですから、上の式にはほとんど誤差を含んでいないと言えます。

状況によっては視風力射程差は省略しても差し支えありませんが、その場合には勿論それが誤差となることは言うまでもありません。


一例として、今仮に測距から発砲までの経過時間 (t1) を 15秒とし、各変距と飛行秒時 10秒及び 20秒の場合の変距量 (単位 : m) を計算すると次の様になります。


変距 (kt)  5 10 15 20 25 30
飛行
秒時
10秒  62 125 183 250 315 375
20秒  88 172 262 350 438 525






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最終更新 : 01/Jun/2015







水上射撃の射法理論

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