水上射法 (3)



 「全量射法」 の概念


全量射法」 とは、「変距射法」 において 「距離時計」 により自動的に算出していた刻々の距離の変化を、射撃指揮官が自分の頭の中でこれを行って 「照尺距離」 を修正する射法です。

したがって、「変距射法」 において射弾を目標に近づけるための距離修正の要領に、射撃指揮官自らの暗算による距離変化量に対する修正 をこれに加算することが 「全量射法」 の修正法になります。

即ち、「全量射法」 の基礎となるものは 「変距射法」 における修正法です。

しかしながら、射撃指揮官自らが 「距離時計」 によるような刻々の距離変化を暗算するようなことは実際問題として不可能なことですから、ある程度の時間間隔を決めておいて、その時間内の変距量を算出して距離を修正する方法を採ります。

この 「ある程度の時間間隔」 とは、弾着した時からこれを見て修正した射弾が弾着するまでの経過時間が基準となります。

例えば、この経過時間を25秒とすると、この25秒間に変化する距離差は (変距(ノット)/2) x 25 米(メートル) として暗算することができます。 これによると、25秒間の変距量との関係は次のようになります。


変 距(節) 変距量(米) 対変距修正量
10 125 100
15 188 200
20 250 300
30 375 400


この様にして算出した距離の変化量を照尺距離の修正量として使用しますが、これを特に 「対変距修正量」 と呼んでいます。

以上のことから、この 「全量射法」 は、射撃指揮装置が発達してからは、これらのものが故障などにより使用できなくなった場合の 「応急射法」 として位置付けられるようになりました。

全量射法」 には、大きく分けて2つのやり方があります。 それは 「命中主義」 と 「極限主義」 です。

極限主義」 とは、変距が比較的大きい場合 (概ね20ノット以上) に実施するもので、変距が 「遠 (近)」 の場合には 「遠 (近) 弾」 で待って目標が弾着に入ってくるのを待ち受け、「近 (遠) 弾」 に替わった時に一挙に相当大きな修正を行って、再び 「遠 (近) 弾」 が出るように修正するものです。

この時の修正量が大きすぎる場合は無駄弾が多くなり、小さすぎる場合は反方位弾にならず待ち受けにならないおそれがあります。

この待ち受けを主旨とする 「極限主義」 に対して、「命中主義」 は変距が比較的小さい場合に実施するもので、常に命中を期するように修正していくものです。

「全量射法」 における適当な修正方法などを含め、詳細については後の 「射法理論」 の項で説明します。







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最終更新 : 17/May/2015







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