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方位盤の発達
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中口径砲用の方位盤は、大正7年に軽巡 「天竜」 「龍田」 に装備したのが初めです。 以降、順次各巡洋艦・駆逐艦等 ( 「迅鯨」 及び 「睦月」 型には旋回方位盤のみ) 及び主力艦の副砲用にこれを装備しました。 これらは製造時期及び艦により各方位盤には多少の差異があり、またそれぞれについて名称は特に付与されませんでした。
大正13年に 一三式方位盤 が採用され、順次 「那智」 型巡洋艦の主砲用に、次いで 一四式方位盤 となって 「鳥海」 型巡洋艦の主砲用に装備され、以後長く本型式のものが使用されました。
これらはすべて射撃盤出現以前のものであって、方位盤が射撃指揮装置の主体となっている型式のものでした。 したがって、方位盤には 「動揺修正装置」 「占位差修正機構」 「砲軸角計出調定機構」 及び 「苗頭修正機構」 などをも備え、苗頭は別計算により、あるいは 「変距率盤」 (変距及び自的苗頭を計出するもの) 等を利用して計出し、これを 「左右苗頭修正機構」 に調定して修正し、定偏苗頭は多くは砲側で計出修正するようになっていました。
これらは 方位盤射撃装置 の類型に属するものです。 ただし、太平洋戦争終戦頃には方位盤射撃装置とは 平射射撃指揮装置 を意味するものとなっていました。
(注) : 旧海軍での制式名称は 「方位盤照準装置」 ですが、用兵者としては最初の名称を引き継ぎ 「方位盤射撃装置」 又は単に 「方位盤」 と呼ぶのが一般的です。 本項においては以後もこちらの名称を使用します。
また、方位盤射撃装置においては、発砲は電気的に行い、全砲の発射を方位盤側で統一して一斉に行えるように設計され、後に採用された 「三式電気通信器」 を使用する場合、あるいは陸上等で発砲電路が装備困難な場合の他は、太平洋戦争終戦までこの方式が使用されていました。
次いで 「射撃盤」 が出現しましたが、上述の方位盤は何れもそれ以前に計画されたものであるため、砲軸角、左右苗頭等を調定すると同量だけ照準望遠鏡を反対方向に移動し、目標を照準し直すことにより所要の仰角、旋回角が得られるように構成されており、その他にもこの射撃盤と組み合わせるのに種々の不具合な点がありました。
そこで、この方位盤と組み合わせることを前提としてこれらの不具合な点を改善した新しい方位盤が計画され、昭和9年にこれの完成をみて制式採用されました。 これが
九四式方位盤 です。 ここに初めて近代的な射撃指揮装置の形態を整えるに至ったのです。
以降、戦艦の主砲用方位盤は逐次本方位盤に換装され、また新造の巡洋艦及び駆逐艦の主砲用方位盤もすべて本型式のものが装備されました。
また、「九四式射撃盤」 の採用と相俟って、「青葉」 型巡洋艦の主砲用及び軽巡の主砲用、並びに戦艦の副砲用の方位盤も、逐次この九四式方位盤に換装されました。
九四式方位盤には数種の型式があり、各型式により多少の相異がありましたが、それを概説すると次のとおりです。
一型 : 戦艦及び 「最上」 型以降の重巡の主砲用
方位盤側で距離・苗頭を追尾調定することにより、砲軸角及び苗頭を直接俯仰・旋回発信器に注入する。 なお、追尾することなく、直ちに仰角・旋回角発信器に注入されるように改良されたものもあり、また改良型では射撃指揮官用望遠鏡を照準操作により同時に指向するように構成されており、何れも動揺修正及び占位差修正は方位盤側で行う。
二型 : 戦艦の副砲用
距離及び苗頭は追尾できるように設計されているが、射撃盤 を使用する場合は断とする。
三型 : 駆逐艦の主砲用
砲軸角及び苗頭の注入、並びに潜差修正及び集中角修正は、距離苗頭盤 側で行い、方位盤側では動揺修正だけを行う。
四型 : 軽巡の主砲用
動揺修正は切り替えにより、直接発信器へも、また間接的に望遠鏡へも導入できる。
その後、改良を加えて、昭和14年に 九八式方位盤 として 「比叡」 の主砲用に、更にこれの一部を改良して昭和16年に 九八式方位盤改一 として 「大和」 の主砲及び副砲用に、次いで 「武蔵」 に装備されました。
最終更新 : 20/Apr/2014
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