射撃盤の変遷




 平射射撃盤


航空機の発達に伴い、平射射撃盤による対空射撃の機会が益々増大したので、平射射撃盤を極力活用して高射が実施できるように研究がなされました。

さし当たりの処置としては、射撃盤の一部を改造しましたが、平射射撃盤に高射性能を付加する要求はいよいよ大きくなり、九二式射撃盤改一に改良を加えて高射機構を強化した 九二式射撃盤改二 とし、昭和19年に 「大淀」 の主砲用に装備しました。

一方、駆逐艦は開戦以来その任務上特に対空射撃の機会が大きいにもかかわらず、その装備する九四式距離苗頭盤は全く高射性能を備えていないため、角速度式射撃盤を採用して高射性能を付与したものを 二式距離苗頭盤 と し、昭和17年に 「高波」 型駆逐艦の主砲用として装備し、その後更にその一部を改良した 二式距離苗頭盤改一 として、昭和18年に 「荒波」 型駆逐艦に装備しました。




 高射射撃盤


太平洋戦争開戦後、戦争の様相は基地航空作戦を主体とするに至り、旧海軍においても基地航空部隊を増強するとともに、これに関連して基地防空の強化が必要となり、これに付随して海軍部隊の大部は陸上に移動し、ここに地上防空兵力の急激な膨張をみるに至りました。

したがって、陸上用の高射器としては大量生産に適することが重要な要件の一つとなったのですが、九五式陸用高射器は量産には不適であり、そこで香港で捕獲された英陸軍の 毘式 (ビッカース式) 高射器 高度基準、角速度式) を基礎としてこれに一部改良を加え、昭和17年に 二式陸用高射器 として採用しました。

しかしながら、この二式陸用高射器でもなお生産が間に合わないため、「簡略LPR式照準器」 を利用した 四式射撃装置 をも採用しました。 この四式射撃装置は、小型艦艇の高角砲用として、また陸上及び艦艇の高角砲の予備指揮装置として広く利用されました。

一方、九四式高射射撃盤 も量産可能なように機構を改め、九四式高射射撃盤改一 として昭和19年に採用するとともに、これを陸上での要地防空用に 三式陸用高射射撃盤改一 として採用しました。

更に、主として陸上の要地防空用として一層高性能な高射射撃盤が研究され、九五式陸用高射器の測的機構と同型式で、かつその一部を改良した 三式陸用高射射撃盤二型 が昭和20年に完成しました。

なお、昭和20年、陸上砲台群の広範な地域の砲戦を指揮するための 五式砲戦指揮盤 が完成し、呉において装備するに至りました。 この指揮盤は、高度基準・線速度式 を採用し、砲台群の砲戦を統一指揮する装置であり、これまでの単一砲台の指揮装置から砲台群の指揮へと発展しようとした意欲的なものでした。




 太平洋戦争後半〜末期の傾向


既に述べてきましたように、平射射撃盤は平射専用に計画されましたが、戦闘様相の変化に伴って高射性能も有することが要求されるようになり、次第に平射射撃盤は更なる高射性能が付与された高射・平射兼用の射撃盤となる傾向にありました。

旧海軍においては、従来から平射射撃盤は勿論のこと高射射撃盤においても大量生産をあまり考慮して計画されていませんでした。 このため、太平洋戦争における艦船部隊等の膨張に伴う需要の急増、あるいは戦闘による消耗の補填に対応することができず、次第に大量生産の要求に応じられるようにその計画の変更が求められました。







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最終更新 : 20/Apr/2014





射撃指揮装置発達史

始めに

1.方位盤
 (1) 方位盤の出現
 (2) 方位盤の発達
 (3) 高射器の出現
 (4) 方位盤の変遷

2.射撃盤
 (1) 射撃盤の出現
 (2) 射撃盤の発達
 (3) 高射射撃盤
 (4) 射撃盤の変遷