本射の要領 (変距射法)




  1.試射から本射への移行要領
  2.本射中の修正要領  ← 現在の頁
   (1) 試射で夾叉弾を得て本射に移行した時に、偏位弾となった場合の修正方法
   (2) 捕捉濶度で目標を捕捉して本射に移行し、その折半照尺が偏位弾となった場合の
      修正法
   (3) 同上の状況で門数少なく、かつ飛行秒時が短い場合の特例
   (4) なお夾叉弾を得ない場合の修正法 (その1)
   (5) なお夾叉弾を得ない場合の修正法 (その2)
   (6) (5)と同じ状況で、門数少なく、かつ飛行秒時が短い場合の特例
   (7) 本射中に夾叉弾から偏位弾に変わった場合の修正法
  3.打消修正
  4.本射要領のまとめ




 

2.本射中の修正要領


(1) 試射で夾叉弾を得て本射に移行した時に、偏位弾となった場合の修正方法


もし試射第1弾、若しくはその修正弾である第2弾において夾叉弾を得てそのまま本射に移行した時に、本射第1弾が全遠又は全近の偏位弾となった場合の修正方法について検討してみます。




一般的には、照尺 0 で夾叉し、続く照尺 0 で偏位弾となった場合には、修正量 L はその時の目標存在公算と変距誤測量最確値 (E) とによって修正すべきです。

これについて、照尺 O で夾叉したことにより目標存在公算が求められますので、まずその目標存在公算に対する修正濶度 X (単位は戦闘公誤 r ) の修正弾が全遠弾となる場合の公算を求めてみます。

(注) : 夾叉弾に対して射弾修正することは実際にはあり得ないことですが、ここでの検討のためにこの様な仮定を設定しただけと言うこに注意してくださ。

−2 r −1 r +1 r +2 r +3 r +4 r +5 r +6 r
0.028 0.096 0.236 0.446 0.670 0.844 0.942 0.964 0.999
0.008 0.040 0.130 0.290 0.502 0.712 0.870 0.962 0.990
0.002 0.026 0.100 0.240 0.430 0.633 0.810 0.920 0.962


この表を利用して、2射弾の間に修正濶度 (X) を加えない場合の変距誤測量の最大値を求めることが出来ます。

即ち、2射弾の間には修正がありませんので、変距誤測による照尺の変化が修正濶度と同じ作用となります。 これによって、変距誤測最確値 E は O (夾叉) と O (全遠) の結果からする O の事後目標存在公算 (π) の最大点として求めることができるということです。


  η : 上の表による全遠公算曲線
  ω : 変距誤測による射心存在公算曲線
  E : 変距誤測量の最確値
  π : O 後の事後目標存在公算
   


その求めた結果を表にすると次のとおりです。


0.5 r 1 r 2 r 3 r 4 r 5 r 6 r
0.30 0.70 1.97 3.08 3.72 4.10 4.36
0.40 0.95 2.50 3.63 4.17 4.52 4.76
11 0.50 1.21 3.00 4.18 4.69 4.98 5.20


なお、射心移動を考慮する場合には、r を射心移動公誤と戦闘公誤の合併公誤で取り扱えば良いと言うことになります。

したがって、2射弾間に修正を加えない場合には L = 0 ですから、偏位弾の照尺 Oに対する修正量L は次の式で与えられることになります。




これにより具体的に計算をしてみますと、


 ア. r=4、n=7、r=100、t=t=60秒 の場合


   変距誤測量公誤 r は  0.515 x 4 x 60 = 120 = 1.2 r



上の表から1.2 r に対応する E は1.26 r = 126 となりますから、L = 126+126 = 252 となり、したがって実際の修正では 「高め (下げ) 3」 と言うことになります。


 イ. r=4、n=3、r=70、t=t=30 秒 の場合


   変距誤測量公誤 r は  0.515 x 4 x 30 = 62 = 0.9 r



上の表から 0.9 r に対応する E は 0.6 r = 42 となりますから、L = 42+42 = 84 となり、実際の修正では 「高め (下げ) 1」 ということになります。

ただし、旧海軍では 100 以内の修正は射撃効果の点から避けるべきとされておりますので、この場合はこのまま次弾を無修正で発射し、再度同一偏位弾が続くならばその時に 200 の修正を行うことも射撃指揮官の選択肢であると言えます。


以上を纏めますと、


試射で夾叉弾を得てそのまま本射に移行した時に、その本射第1弾が偏位弾となった場合には捕捉濶度の半量の修正を行う。 ただし砲門数が少ない場合には半量では多すぎる場合がある。



と言うことになります。






 

(2) 捕捉濶度で目標を捕捉して本射に移行し、その折半照尺が偏位弾となった場合の修正法


この場合、下図に示す様に O 弾が O 弾と同方位弾となる場合 (甲) と、反方位弾となる場合 (乙) の2通りが生じます。




まず (甲) の同方位弾となった場合を説明します。 この場合は下図の様に O 弾を考えずに、O の全近弾に対して L−L の修正を行った O 弾が全遠となったと考えても同じことになります。




とすると、これは前項の 「1.試射から本射への移行要領」 と同じですから、O での修正量 L は次のとおりとなります。




次の具体例で計算してみますと、


  戦闘公誤 : r = 100   発射弾数 : n = 7
  初弾偏倚公誤 : r = 400 = 4・r   t =t = t = 60 秒
  捕捉濶度 : L = 600 = 6・r   変距誤測公誤 : r’=4 ノット
  修正濶度 : L = 400 = 4・r1  


変距誤測最確値表 (第8表) より、E = 3・ r = 300 が得られます。


変距誤測量最確値表 (第8表)


これを上記の式に入れれば、L = (600−400+300)/2 + 300/2 = 400 となります。

次ぎに、(乙) の反方位弾となった場合は、O 弾と O 弾とによって改めて目標を捕捉したことになりますから、その照尺差 L から修正量 L’は次の式となります。




これによる具体例を上の (甲) の場合と同じ条件により計算してみますと、E = 1.14・r = 114 が得られ、これにより L’ = 372 となります。 (計算過程は省略しますので、ご自分でやってみてください。)

ただし、この場合に使用する数表は上記の 「第8表」 ではなく、次の 「第9表」 になります。


変距誤測量最確値表 (第9表)


 何故ならこの場合は、初弾偏倚公誤などの条件を採り入れておりませんので、単純に第1弾が全遠 (全近)、第2弾が全近 (全遠) で両者の照尺差が K・r と言う場合の変距誤測量の最確値 E でなければならないからです。


以上を纏めると、


捕捉濶度の修正で目標を捕捉してその捕捉濶度の半量よりやや大きめの修正を行って本射に移行した時に、その本射第1弾が夾叉弾とならなかった場合には、更に捕捉濶度の半量よりやや大きめの修正を行う必要がある。



と言うことになります。 これの具体例を図示しますと次のとおりです。


捕捉濶度 600 の場合 捕捉濶度 500 の場合





 

(3) 同上の状況で門数少なく、かつ飛行秒時が短い場合の特例



  戦闘公誤 : r = 70   発射弾数 : n = 3
  初弾偏倚公誤 : r = 210 = 3・r   t =t = t = 30 秒
  捕捉濶度 : L = 500   変距誤測公誤 : r’ =4 ノット
  修正濶度 : L = 400  


同方位弾の場合 :


    r = 120 ≒ 2・r

    E = 1.5・r = 105

    L = (500−200+105)/2 + (30/60)・105 ≒ 250



反方位弾の場合 :


    r = 60 ≒ r



したがって、変距誤測量最確値表 (第8表) より


変距誤測量最確値表 (第8表)


    E = 0.55・r≒ 40

    L’=(300+E)/2 + (t/t)・E ≒ 200



これを纏めると、次のとおりとなります。


門数が少なく飛行秒時の短い射撃では、捕捉濶度の半量よりやや少なめに修正する必要がある。



捕捉濶度 500 の場合の修正例





 

(4) それでもなお夾叉弾を得ない場合の修正 その1


上の (1) の場合と同様の方法を用います。 即ち、夾叉弾 O に対して−L の修正を行った修正弾 O が更に全遠となったということですから、変距誤測量が相当に大きいことが予想されます。




つまり、下図において、π は O が夾叉、O が全遠となった時の O 照尺における射心存在の事後公算曲線で、この π の最大点と O との距離が変距誤測量の最確値とみなされます。


  η  : 夾叉弾を得た目標に対する全遠公算曲線
  ω : 変距誤測によるO 照尺の射心存在公算曲線


即ち、π は次の式で表されます。




この場合の E は、次の表のとおりとなります。 (単位は戦闘公誤 r)


0.5 r 1 r 2 r 3 r 4 r
11 11 11 11 11


5 r 2.4 3.3 3.8 2.8 3.75 4.05 5.45 5.8 6.2 6.8 7.4 7.75 7.7 8.4 8.6
4 r 1.5 2.5 2.9 2.6 3.15 3.4 4.85 5.3 5.4 6.0 6.85 7.05 6.7 7.55 7.6
2 r 0.5 0.65 1.3 1.45 2.45 2.5 3.6 3.9 4.15 4.7 4.85 5.2 5.4 5.65 6.05
1 r 0.5 0.5 0.5 1.5 1.5 2.5 2.5 3.6 3.6 3.75 4.4 4.65 4.4 4.9 5.4


これに基づき、2つの例で L を求めてみると


  ア. L=400=4・r、n=7、t=t=t=60秒、r=100、変距誤測公誤 r’=4 とする場合


    r = 0.5x4x120 = 240 = 2.4・r  ∴ E = 5.92・r ≒ 600

    L =E − L +(t/(t+t))・E ≒ 500



  イ. L=200=2・r、n=3、t=t=t=30秒、r=70、変距誤測公誤 r’=4 とする場合


    r = 120 ≒ 2・r  ∴ E ≒ 4・r ≒ 300

    L =E − L +(t/(t+t))・E = 250 ≒ 300



ただし、t = 20秒の時には、E = 150、L = 25 となってしまいますので、この場合は一考を要することになります。


以上を纏めると、次のとおりになります、


この様な場合には、修正量を更に大きくする必要がある。






 

(5) それでもなお夾叉弾を得ない場合の修正 その2





図の (甲) の様な経過を示す場合、これは結局 O と O で捕捉したと考えれば、その間の修正量は L−(L+L) < 0 となります。

例えば、L = 600、 L = L =400 とすれば、結局初弾O の全近に対して 「下げ200」 の修正をした O 弾着が逆に全遠になったということであり、その間 (t+t+t) に相当な変距誤測量があることが推定されます。

その最確値を E とすれば、O に対して E − 200 の濶度のある O が全遠となってしまったと言うことです。

また、(乙) の様な経過を示す場合は、結局 O と O で捕捉したと考えることができ、その間の修正量は L − L’ ≒ 0 となり、無修正の2射弾で捕捉したことになります。 これも同じく相当大きな変距誤測量が予想されます。


しかしながら、この(甲)及び(乙)のどちらの場合でも、これまでご説明してきました解決方法と同じ要領でO に対する修正量 L 及び L’ を求めることが出来ます。


変距誤測量の最確値 (E) については、既に 『射法の要素』『変距誤測』 のところで作図による方法を説明しましたが、ここでは先にご紹介した次の略算式を用いることとします。 (ただし、この略算式の説明は省略します。)




この略算式により、次の例でO に対する修正量を求めて見ますと、



  戦闘公誤 : r = 80   発射弾数 : n = 7
  初弾偏倚公誤 : r = 400 = 4・r   t =t = t = 60 秒
  捕捉濶度 : L = 600   変距誤測公誤 : r’ =4 ノット
  修正濶度 : L = L = 400  


    (甲) の場合 : L = 550

    (乙) の場合 : L’= 475



が得られます。






 

(6) 上の (5) と同じ状況で、門数少なく、飛行秒時が短い場合の特例


  ア.具体例 その1




初弾O の全近に対して修正を行わない (+5−3−2 = 0) 射弾O が全遠となりましたが、実際にはこの間に変距誤測量 E が加えられていることになります。

    E = 70 x 3.6 = 252


となりますので、O に対する修正量L は次の値となります。

    L = 252/2 + 84 = 210



  イ.具体例 その2




これは第2弾全遠に対して −3+2 =−1 の修正弾が全近となった場合ですが、

    E =70 x 2.2 = 150


となりますので、これによりO に対する修正量 L’は次の値となります。

    L’= (100+150)/2 +150/2 = 200






 

(7) 本射中に夾叉弾から偏位弾に替わった場合の修正法


上の (1) の試射において良好な弾着を得て本射に移行した時に偏位弾となった場合の修正と同じ方法を用います。 ただし、射弾間の時隔が短くなっていることが異なってきます。

通常、捕捉濶度の半量の修正を行います。 そして、これによっても更に偏位弾となる場合には上の (4) 又は (5) の方法を準用することになります。

また門数が少ない場合には計算修正量は 100 程度となりますので、偏位弾に替わった最初は一応見送って (=修正を行わず)、再び偏位弾が続くようならばその時に改めて 200 の修正を行う方がよいとされています。







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最終更新 : 30/May/2015







水上射撃の射法理論

   始めに

   試射の要領

   本射の要領 

   測距射法

   全量射法

   自変距射法

   左右修正

   転舵修正

   飛行機観測