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弾道修正の概要 |
弾道修正とは
前項で説明しましたように、射表編纂における基準状態とはある特定の条件を仮定したものですから、このままでは実際に射撃をすることはできません。
それは、実際の射撃の 「現場」 を巡る環境条件が、この仮定した基準状態と全く同一であることはあり得ないことであり、したがってこの基準状態からから偏差した分だけ、これによって弾道は当然ながら基準弾道から偏位するからです。
実際の射撃に当たり、この 基準状態からの偏差に基づく 弾道の偏位量 分だけ逆 (反対方向) に修正する必要があります。 この修正のことを 弾道修正 と言います。
弾道修正の区分
弾道修正には次のものがあります。
(1) 弾道基準修正
ア.砲軸角
イ.定 偏
(2) 弾道当日修正
ア.初速差
イ.風
ウ.自艦運動
エ.空気密度
オ.気 温
カ.弾種及び弾量
キ.地球自転
ク.出行角
ケ.当日修正補正 (補修正)
弾道基準修正 とは、“修正” とは名が付いておりますが、その内容の実際は目標未来位置を通る射表記載の基準弾道を求めることです。 つまり、砲軸線を目標未来位置を見通す線に対して基準弾道分の砲軸角と定偏分だけずらす、即ち修正することを意味します。
また、当日弾道修正 とは、射表記載の基準弾道に対して、射表編纂上の基準状態として規定されている各要素の値からずれている分を修正することを意味します。
ここで、既に説明してあります目標未来位置の決定法について思い出していただきたいと思います。 当該項目では最後に次の図を示してお話ししました。
この図を、射撃計算上の弾道修正に関して書き直すと、次のようになります。
これを見て皆さんは多分 “目標未来位置に対してまず基準弾道を求め、次にそれからのずれを求めるのが順序じゃないの?” と思われることでしょう。
ところが、上記の弾道当日修正を行う各要素を考えていただけばお解りいただけると思いますが、これらの要素は基本的に初速や左右偏差量の増減ですから、結局は弾丸が目標未来位置まで飛行する間に基準弾道からずれる空間的な量
(=距離) であって、弾道曲線そのものを直接修正するものではない、ということです。
つまり言い換えれば、目標未来位置に対する位置のずれを修正することとなりますので、この弾道当日修正を先にして、次いでその修正位置 (= 前進位置 と言います) に対する基準弾道を求めればよいことになるのです。
そしてもう一つは、砲側照尺の目盛りです。 この目盛りは計画初速又は射表初速で刻まれておりますから、最終的にはこれに該当する基準弾道値を求める必要があります。 要するに、砲の仰角の基準は何か、と言うことですね。
余談になりますが、射撃指揮装置で管制される砲の場合、例えば水上射撃においては、射撃開始前に射表を元に手計算した照尺と苗頭の値を砲側で手動調定すると、
もし射撃指揮装置による管制によって砲が正しく動いていれば、砲側照準器の十字線の真ん中に標的が見えるはずです。
つまり、砲側で照準して射撃する場合は、照尺と苗頭を調定して、射手と旋回手が照準器の真ん中に標的が来るように砲を操縦するわけですが、その逆をやるわけです。
訓練射撃では必ず射撃開始直前にこれでチェックをして、標的を曳航している曳的艦を撃ってしまうようなことがないように安全を確保していました。 まあそれでもかつてその昔、護衛艦隊司令官座乗中の曳的艦を夾叉してしまったようなこともありましたが ・・・・ (^_^;
では、最近の無人自動砲の場合、砲口の向きが正しいかどうかどうやって判断しているのか? これは企業秘密ですかね。
それでは、これらの弾道修正のそれぞれの要素の内容について説明していきます。
(注) : 「砲軸角」 という用語の 「砲」 の字は、正しくは 「月」 偏に 「唐」 と書いて 「とう」 と読む文字ですが、常用漢字表にも常用フォントにもありませんので、全て
「砲」 で代用しています。
最終更新 : 13/May/2015
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