既に説明してきましたように、地球上で射撃をする限り、即ち重力圏と大気圏の内において射撃をする限り、目標未来位置で目標に弾丸を命中させるためには、弾丸降下量と定偏を見越して射撃をする必要があります。 したがって、砲軸角と定偏苗頭は弾道の基準状態下でも修正しなければならない ものですから、これを目標未来位置を見通す目標線に対する 弾道基準修正 と言います。 ただし、出行角 (Gun Jump) については前項の 砲外弾道 で説明しましたように、理論的かつ数値的に現すのが大変難しい問題ですので、これは現在では射弾の散布の中で考えて処理していくのが一般的です。 つまり、砲軸線 = 射線 として取り扱って行きます。 なお、この砲軸角の定義からもお解りいただけるように、対空射撃においては、射撃指揮装置が発達した現在では砲に直接砲軸角を調定する必要はなくなりましたので、実際問題として目標線と射線 (LOF、Line of Fire) との角度、即ち砲軸角というのはあまり意味を持たなくなりました。 あくまでも、射撃指揮装置が生まれる以前の時代において、砲側照準で射撃をする場合に必要だったと言えます。 とは言え、水上射撃においては、高角 = 0 と考えると (実際は違いますが) 仰角 = 射角 = 砲軸角 ですから、そのままの意味でも使用可能です。 実際の砲の例を示します。 下図は米海軍の第2次大戦時の代表砲である38口径5インチ砲の弾道図です。 使用弾種は Mk-35 対空通常弾 (弾量 55.18 ポンド)、初速 2600 フィート/秒です。 この場合で、砲軸角がどの程度の値になり、また目標の高度と射距離によってどのように変化するのかを、「射距離対砲軸角」 及び 「高角対砲軸角」 について射表から作図すると、それぞれ次のようになります。 同様に、定偏について射表から作図すると、それぞれ次のようになります。 実際には、砲軸角も定偏も、ともに射表を引けば値が得られることですので、ここではそれぞれが射距離や高角などによってどのように変化するかの特性を感覚的に把握していただければ結構です。 (注) : 「砲軸角」 という用語の 「砲」 の字は、正しくは 「月」 偏に 「唐」 と書いて 「とう」 と読む文字ですが、常用漢字表にも常用フォントにもありませんので、全て 「砲」 で代用しています。 最終更新 : 13/May/2015 |