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第4話 迎送式について



 映画 「トラ・トラ・トラ」 の冒頭シーン
 登舷礼式
 「迎送式」 とは、陸上から長官艇へ
 長官艇で旗艦へ ← 現在の頁
 旗艦乗艦 (着任)




 長官艇で旗艦へ


さて、新任の長官が迎えの長官艇 (内火艇) に乗艇されたところからですが、岸壁・桟橋の位置や形状が余程特殊でない限り、出迎えの長官艇は 「出船」 の態勢で待つのが船乗りの躾けです。

長官が乗艇されると、直ちに艇指揮の 「おもて離せ!」 の号令がかかり (乗艇直前にすでに繋留の舫索は外して艇員 (又は岸壁待機の兵員) が保持しておりますので 「舫離せ!」 の号令はありません)、後部キャビンの最後部 (ここが最上席) に敷いてある将官用敷物のところに、長官がまさに腰を下ろそうとするその瞬間に 「前進微速!」 と令して前進の機械をかけ、その前進の反動で長官が “ストン” と腰を下ろすタイミングがベストとされていました。

短艇敷物については、「海軍短艇敷物規程」 (大正13年達39号) によって定められています。 『海軍法規類集』 コーナーにて公開しておりますので、ご参照ください。

なお、旧海軍では当初は艦長用のものは無く、艦長と言えども通常の士官用のものが使われていましたが、昭和3年になってから艦長用敷物が追加されました。 (というより、従来の士官用敷物の仕様が艦長用となり、士官用が新たに制定されたと言う方が正しいのですが。)

この昭和3年の艦長用及び士官用敷物の仕様については上記のファイルにはありませんが、『海軍兵須知提要』 (海軍省教育局、昭和15年) では次の様になっています。




さて、新長官を乗せて長官艇が桟橋 (岸壁) を離れますと、この将旗を掲げる短艇が近傍を通過する在泊艦艇は、「海軍礼式令」 第74条第2項の規程によりこの短艇に対して敬礼することになります。


第七十四條 軍艦と軍艦又は軍艦と将旗若は代将旗を掲げたる短艇と遭うとき又は之に近づくときは左の敬礼を行うべし
(中略)
 二 軍艦は将旗又は代将旗を掲げたる軍艦又は短艇に対しては喇叭 「気を著け」 一回を吹き上甲板に在る准士官以上は之に面して敬礼を行いその他の者は姿勢を正し衛兵 (衛兵司令之を指揮す) は捧銃を行い喇叭 「海行かば」 一回を吹奏すべし


ただし、長官が乗艇する短艇はこの敬礼に対して答礼は行いません。 またこの敬礼の時、当該条文では近傍在泊艦は総員が上甲板に整列するなどの規定はありません。

しかし、新司令長官の着任であることは予め全艦に通知されて判っていますので、新長官に敬意を表するため、慣習として少なくとも手空き総員が軍装にて整列しているのが一般的と言えます。 これもある意味、海軍における伝統と慣習であり、躾けと言えます。


(注) : この短艇敷物については、現在の海上自衛隊でもほぼ同じようなものが使用されています。





余談ですが、艦艇長にとって離着任の時、特に離任時にこのように内火艇で艦を離れるのが最高とされています。 私も 「きりしま」 艦長離任時にはこの内火艇での機会に恵まれましたが、この時の感慨は一生忘れることができないでしょう。







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 最終更新 : 07/May/2017