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第4話 迎送式について




 映画 「トラ・トラ・トラ」 の冒頭シーン
 登舷礼式
 「迎送式」 とは、陸上から長官艇へ ← 現在の頁
 長官艇で旗艦へ
 旗艦乗艦 (着任)




 「迎送式」 とは


それではこの 「迎送式」 とはどの様なものなのでしょうか?

「海軍礼式令」 中の規程では、その要領について次の様になっています。


第百二十九條
四 艦隊司令長官、独立艦隊司令官又は戦隊司令官に対してはその旗艦以外の麾下の各艦長及各艦士官室高等武官、士官次室高等武官、准士官室総代各一名其の旗艦に参集し対舷に整列して其の旗艦の総員と共に迎送す


たったこれだけです。

ではその他のことはどうなっているのでしょうか? 例えば “総員と共に” とありますが、その総員はどこにどの様に整列するのでしょうか?


実はどの様に実施するのかの細部について旧海軍として “こうだ” と明文化されたものはありません。 というより、迎送される将官の職などはもちろん、その時の事情や状況、都合などによって異なってきますので、一つのパターンとして明文化出来ないと言った方が良いでしょう。

したがって、儀式全体については海軍の慣習とその時その時の状況によって流れが決められ、細部については各種規程の中から該当部分を繋ぎ合わせて実施することになります。

例えば、前任の司令長官や司令官が在艦して新任者を出迎えて申継を行い、その後前任者に対する離任の迎送式を行うのか、新任者が着任時には既に前任者は離任しているのか、などでも変わってきます。

ということで、以下は平時において新たに親補された連合艦隊司令長官が皇居での親任式を終えた後、港内又は作業地に停泊中の旗艦に着任する場合で、として一般的な状況についてお話ししてみることにします。



 陸上から長官艇へ


まず順序に従い、最初に新長官の陸上から旗艦までの移動です。

列車にて最寄りの駅に到着時には、鎮守府所在地であれば鎮守府から迎えの車と人が派出されるでしょう。 またそれ以外の地であるならば、副官又は幕僚など所要の者が出迎えるはずです。

新長官が前日に陸上まで到着している場合には、旅館、水交館などに1泊することも考えられます。 この場合、急ぎの案件などがある場合には、参謀などが出向いて所要事項の説明を行い、内意を得ておくこともあります。 あるいは、旧長官が翌日の交代後直ちに離任する必要がある場合など、十分な申継ができない場合には、この時に新旧長官どうしで非公式に (申継書記載事項以外のことも色々ありますので) 行う場合も無いとはいえません。

ただし、正式な着任前ですので大々的なことは行わないのが通例です。 平時と雖も、着任早々は大変に多忙となりますので、「連合艦隊司令長官になった」 という感慨を味わい、翌日からに備えての気持ちを整えるための重要な晩、ということです。


さて、新長官が駅又は宿泊場所から桟橋に到着すると、当然それまでに迎えの内火艇が待機しております。 この迎えには、通常は旗艦に配属されている専用の艤装を施した15m内火艇、即ち 「長官艇」 を使います。

ただしこの 「長官艇」 が都合により使えない場合などもありますので、これもその時の状況により鎮守府長官艇を港務部から借りたり、あるいは旗艦搭載の通常の15m、あるいは17mの内火艇を使う場合もあり得ます。 要は、塗装や機関の整備などが良好で見栄えのする、長官交代行事に相応しい艇が選ばれるということです。


( 昭和11年撮影の横須賀鎮守府司令長官用の15m内火艇 )

( 撮影時期不詳 戦艦 「陸奥」 搭載の17m内火艇 )


迎えの内火艇は、旗艦次室士官の若手将校が艇指揮 (チャージ) となり、艇長以下艇員は旗艦乗員の選りすぐりであることは言うまでもありません。 そしてこの若手将校にとっては最高に誇らしい一日にもなります。

この内火艇には 「海軍旗章令」 の規程 (第20條) に従い、軍港内の場合と雖も短艇の艇尾旗竿に軍艦旗を (同令第34條)、艇首旗竿に該当将旗を (同令第6條) 掲げます。


第二十條 左の各号の一に該当する海軍大将、海軍中将又は海軍少将公式に短艇に乗りたるときは指揮権の有無に拘らず之に将旗を掲揚す
 一 前条の規定により将旗を掲揚することを得る者及部隊長たる者
 二 元帥、軍令部総長及軍事参議官
 三 外国の艦船又は官庁を訪問する者
司令長官、司令官又は部隊長たる将官解職退去の際短艇に乗りたるときは前項の規定を準用す 艦艇部隊の長海軍少将に進級し解職退去の際短艇に乗りたるときは之に将旗を掲揚することを得


当然のことですが旗艦から迎えの桟橋などに向かう時、そして桟橋などにおいて待機中にはこの将旗は掲げません。 そして新長官が乗艇された時に掲げますが、このタイミングをスマートにやることが “船乗りの潮気” と言われます。 つまり、早過ぎてもいけませんし、乗艇してからモタモタと付けていたのでもいけません。

たしか将旗を艇首旗竿に掲げた写真があったはずなのですが出てきませんので ・・・・ 代わりに天皇旗を掲げた 「御召艇」 のものを。




この写真は昭和4年関西方面行幸のため 「那智」 に乗御される時のものですが、17m内火艇 (昭和期でも 「艦載水雷艇」という呼び方もします) を使用しています。 天皇陛下の臨御ではお付きの人数が多い (それも陛下と一緒にはキャビンに入れない者達が) ので、この17m型が使われる場合が多くなりました。

司令長官クラスの場合、特に離着任に伴う場合はお付きはいないか、いてもごく少数ですので、余程のことが無い限りこの17m内火艇が使われることはないと考えられます。







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 最終更新 : 07/May/2017