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動揺修正と取付面傾度修正 |
動揺修正
前項において、砲の指向位置を水平面基準から甲板面基準に変換して発砲諸元である砲旋回角と砲仰角を求めました。 次に問題とするとのは、その甲板面は船体の動揺によって常に水平面からの傾きが変化するということです。
皆さんご存じのとおり、船体の動揺というのは船の船首尾線方向に対して同一の方向であるピッチングと、それと直角方向であるローリングとで計測されます。
この図ではLOSとなっていますが、測的におけるLOSの場合でも発砲諸元におけるLOFの場合でも同じことです。
しかしながら、LOSによる測的の場合も勿論ですが、発砲諸元である砲旋回角及び砲仰角というのはLOFに対するものですので、この艦首尾線方向のピッチ角とそれに直角な方向であるロール角をそのまま使用することはできません。
即ち、LOF (LOS) を含む鉛直面内における上下角 (Level)、及びLOF (LOS) の軸回りの回転角 (Crosslevel) として測定されなければなりません。
Level においては、下図のように単に砲仰角の増減のことで対処することが出来ます。
しかしながら、Crosslevel においては、下図に示すように、砲旋回角と砲仰角の両方とも修正が必要になります。
このため、照準線 (LOS) に苗頭 (Ls) 及び照尺角 (Vs) を加えた射線 (LOF) から砲旋回角 (Bdg’) 及び砲仰角 (Edg’) を導くには次のようになります。
この動揺修正については常に連続する動的な変換を行わなければなりませんので、射撃指揮装置などを使用する場合にはその実現について動力学的なある種の
「動揺修正理論」 が必要になり、それに基づいた連続解法が行われることになります。
この動揺修正理論とその実現については、射撃指揮装置を含む個々の武器システムの設計によって異なり、またご説明も複雑になりますのでこの初級編ではこれ以上は省略し、上級編でご説明することといたします。
取付面傾度修正
前述の動揺修正を行うためには、その前提として動揺のない静的な状態において甲板面が水平面に対してどの方向にどれだけの角度で傾斜しているのかを知る必要があります。 これが
取付面傾度 です。
ここでいう甲板面とは、実際には方位盤や砲の旋回のローラーパス面 (取付面) のことを意味します。 ただし、本章においてはこれらにここの取付面に関することは一時省略し、単に一つの
「甲板面」 で表現しています。
したがって厳密に言うならば、甲板面たる艦の基準面 (建造時に必ずどこかに設置されます。) に対して、方位盤や各砲夫々のローラーパス面は工作上の限界としての微細な傾きを有しており、かつその値はそれぞれで異なります。 例えば、次のようになります。
この夫々のローラーパス面の傾きを基準面に揃えるように修正することを 取付面傾度修正 と言います。
ローラーパス面の傾きによって旋回及び俯仰の両方に誤差が出てきます。 このうち俯仰の誤差 (α1) についてはローラーパス面の傾度と傾きの高点
(ハイポイント) からの方位の関数として現され、これをもって修正がなされます。
しかしながら、方位の誤差は実際問題としては通常問題とならない程度 (傾度そのものが極めて小さいので) の微少なものであることから、取付面傾度修正としては行わないのが一般的です。
最終更新 : 15/May/2015
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