平射用方位盤




 動揺修正機構
   (1) 平射における動揺修正量
   (2) 動揺上下修正機構
   (3) 動揺左右修正機構
 占位差修正機構
 砲軸角計出機構



 動揺修正機構

  (1) 平射における動揺修正量


平射における動揺修正量計出の原式は次のとおりです。




しかしながら、平射においては高射に比べて左右見越角 (δ) は小さく、かつ以後の旋回角修正量も小さいことから、近似的に砲旋回角 (B) ≒ 現在方向角 (β) としても大差はありません。

従って、@ A 式において B−β=0 とし、@ を射線方向動揺 ( i) ≒ 照準線方向動揺 (Δi)、A を射線直角方向動揺 ( i) ≒ −照準線直角方向動揺 (Δi ) とすると、 B は次の様になります。




また、平射においては未来高角 (α) = 0、上下見越角 (σ)= 0 ですので、δを始めとして仰角諸修正量も一般に小さいことから砲仰角 ( A) ≒ δであり、かつその量も一般に小さいので sin A もまた小さくなります。

これらのことから、次のように見なすことができます。




これにより B’及び C 式は次のようになり、これが動揺上下修正量 (Δψ) 及び動揺左右修正量 (Δβ) の機構式になります。






  (2) 動揺上下修正機構


既に説明しましたとおり、平射用方位盤においては照準望遠鏡は照準線方向に水平に保持されるのではなく、照準望遠鏡によって照準線方向動揺 (Δi) 照準を行います。

したがって、これによって得られた Δiに砲軸角 (ψ) 及び潜差修正量 (D) などを加算すれば必要な砲仰角 (A) が求められることになります。

平射用方位盤をもって高射を実施する場合には、測定高角に縦動揺角が含まれているため、動揺上下修正は sin−1(sin A・cos i) の他は近似的に行われることとなります。

このため、平射用方位盤では高射式においても sin−1(sin A・cos i) の計算機構は設けられません。




  (3) 動揺左右修正機構


    a. 動揺左右修正量の計出法


機構式 (=原式からの略算式) C’により、動揺上下修正量 (Δβ) は f(R) の二次関数計算器と正弦計算器とを組み合わせることにより得られることになります。

下図は、この計算機構の一例で、f(R) の計算には目盛り追尾式を使ったものです。




水平式の平射用方位盤により高射を実施する場合は、Δβ の計出には砲仰角 (A) を使うところを砲軸角 (ψ) を使用するため、必然的に相当の誤差を生じることになります。

高角式の平射用方位盤で、照準線直角方向動揺 (Δi) により旋回望遠鏡を照準線に直角方向に回転させてこれにより水平を保つ方式のものの場合は、ψ の代わりに Aを用いれば良いわけですが、旧海軍の場合依然として ψ 使用していました。

これに対して、Δiにより旋回望遠鏡を動かさないものの場合は、Δiにより旋回望遠鏡の鏡軸線も左右に動揺することとなるため、砲軸線に対する所要の動揺左右量との差のみを修正すればよいこととなりますので、この型式のものは近似的に次のとおりに計出するように Δβ 計算機構を構成しています。





    b. 動揺左右修正法


動揺左右修正量の修正法には 間接式直接式 の2つの方法があります。

間接式 :
横動揺望遠鏡にて水平照準を行うことにより照準線直角方向動揺 (Δi) を動揺左右修正量計算機構に送り、同計算機構において Δiとは別個に調定された tan ψとによって動揺上下修正量 (Δβ) を計出し、照準望遠鏡及び旋回望遠鏡をΔβだけ反対方向に左右に移動させるものです。 したがって、目標の左右照準をやり直せば Δβ の修正が行われることになります。

直接式 :
計出した Δβ は、間接式と異なり照準望遠鏡を動かさず、旋回角発信器において砲旋回角 (B) に加算されます。

間接式は Δβ により照準望遠鏡を左右に動かすため、方位盤旋回手の左右照準を難しくする欠点があります。 ただし、動揺修正手の技量が未熟であっても、旋回手が老練であるならばこれを相殺しえる場合もあります。

これに対して、直接式は照準操作は容易です。



 占位差修正機構

  (1) 潜差修正


潜差修正の原式は次のとおりです。




高低差 (h) は各艦ごと各々固定の値ですので、潜差修正量 (D) が小さいときは次のとおりであり、これが機構式となります。




したがって、D は二元関数計算器を使用して計出することができます。

また、f(R) は通常照尺距離 (R) を使用して近似的に f(R) として目盛追尾式により計出し、歯車比により D とします。

この潜差修正にも直接式と間接式の2つの方法がありますが、旧海軍ではほとんど全部が直接式です。



  (2) 集中角修正


集中角修正量 (m) の原式は次のとおりです。




d cos(β+δ) は未来距離 (R) に比べれば遙かに小さいのでこれを無視することができ、また平射においては β+δ≒β としても大きな差はありませんので、間隔差 (d) に基準値を与えればそれに対する基準の m は近似的に次の式で表すことができます。




したがって、m は f(R) の二次関数計算器と正弦計算器を組み合わせれば求めることができます。

この場合、f(R) は通常近似的に照尺距離 (R) を使用して f(R) とし、計算には目盛追尾式を用います。

次に、方位盤と各砲、又は各砲群中心との間隔を d、d ・・・・ などとすれば、それぞれに対する集中角補正量 m、m ・・・・ は次の式となります。




したがって、m を求めれば m、m ・・・・ は歯車比によって簡単に得ることができます。

下図は集中角修正計算機構の一例です。




本修正機構における f(R) の追尾は、同時に潜差修正における f(R) の追尾を兼ねるのが普通です。

また、m、m ・・・・ などはそれぞれ各砲又は各砲群毎の旋回角発信器に送られ、掲出された砲旋回角 (B) に加算されます。

なお、高角式の平射用方位盤の中には、後述する高射射撃盤の集中角修正量計出機構に準じたものでこれを計算するようになっているものもあります。



 砲軸角計出機構


砲軸角計出の原式は次のとおりです。




したがって、砲軸角 (ψ) は f(R) の二元関数計算器を用いれば求められ、通常は目盛追尾式が使われています。

この ψ の砲仰角 (A) 系への導入方法にも直接式と間接式の2つがありますが、一般的には直接式を用います。

なお、この ψ は射撃盤において計出するようになっているものもあります。







Page Top へ 次頁へ

最終更新 : 26/Dec/2015








射撃指揮装置機構概要

始めに

1.型式の分類

2.方位盤の機構
 (1) 目標照準機構
 (2) 動揺照準機構
 (3) 平射用方位盤 

3.射撃盤
 (1) 測的方式
 (2) 機構一般
 (3) 高射器

4.照準器
 (1) 照準器
 (2) 簡略照準器

5.射撃指揮装置の連結
 (1) 連結系統
 (2) 連結機構
 (3) 発砲電路