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始めに (話題の切っ掛け) |
『別宮暖朗本』 は、第1話 『多田 vs 遠藤論争』 でも申し上げたとおり、採り上げる程の価値のないものであるとしてきましたが、残念なことにウィキペディアを始めとしてネット上の書き込みでこの本を根拠とする記事が見られるようになり、また当該書の書評でも高評価をつける素人さんが現れるに及んで、鉄砲屋の末席に位置するものとしても看過できない状況となりましたことが、ブログでの連載の切っ掛けです。
(注) : ウィキペディアの 「日本海海戦」 についての記事は、多分当方のブログをお読みいただいたのでしょう、それまでの内容からすると 『別宮暖朗本』 を根拠とする間違いは無くなりました。 それでもまだ砲術について理解できないためなのか誤っている点がありますが。
この 『別宮暖朗本』 のウソと誤りを指摘する内に、結局は艦砲射撃の基本に始まり日露戦争期の旧海軍の砲術の実態について、その総てにわたってお話しすることとなってしまいました。 ということは即ち、それ程この書籍は砲術に関することだけを採り上げても、ウソと誤りしか書かれていない (著者は砲術のごく基本的なことさえ理解できていない) ということです。
逆に言うと、これはこれで日露戦争当時の旧海軍の砲術についての一つの纏まった内容となりました。
しかしながら 「ブログ」 という形式では62回もの当該記事の総てを連続してお読みいただくには非常に不便でもあります (サーバーの仕様からする制約もあります) ので、これを纏めて本サイトに改めて掲載し直す次第です。
もちろん、ここで言う 『別宮暖朗本』 とは、次の書籍です。
『 「坂の上の雲」 では分からない 日本海海戦 』
( 別宮暖朗著、並木書房、平成17年5月発行、ISBN : 4-89063-184-4 )
そして、新たに出した当該本の文庫版が次のものです。
『 日本海海戦の深層 』
( 別宮暖朗著、筑摩書房、平成21年12月発行、ISBN : 98-78-4-480-42668-0 )
後者は、「前者を改題し、大幅に加筆・訂正したもの」 とされていますが、内容は実質的に何も変わっていません。 したがって、改めてキチンとした根拠史料に当たって調べ直してみたとか、砲術について勉強し直してみた、というようなことは全くありません。
別宮暖朗氏のこの2つの著書を合わせて以後のお話しにおいても、これを単に 『別宮暖朗本』 と呼ぶことにします。
なお、既に当該本をお持ちの方の参照の便を考え、各項目記事の中で当該本からの引用箇所には、その末尾に ( ) で頁数を入れております。 黒字 が当初の並木書房版、緑字 が改定文庫本の筑摩書房版です。
また、この第2話の中で 『別宮暖朗本』 の記述の誤りを指摘した個所で当該本から引用したものについては、最後の 『(付) 『別宮暖朗本』 砲術関係指摘個所一覧』 として纏めてありますので、ご参考にして下さい。 明治期の砲術に関連することたった一つをとっても、“最小限にした引用” でさえこれだけあります。 実に驚くべきこと、と言わざるを得ないでしょう。
最終更新 : 27/Jun/2011