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「九〇式魚雷」 の機関系統について




まずは酸素魚雷はそれまでの圧縮空気を使ったものとどこが異なるのかを掴んでいただきたいと思います。 そのため圧縮空気を使用した代表例として 「九〇式魚雷」 を例にしてお話しします。


( 九〇式魚雷構造略図 )



ご存じのとおり、この九〇式魚雷は 「試製魚雷丙」 として開発が始められた24インチ (61糎) のもので、昭和5年 (皇紀2590年) に 「仮称九〇式魚雷」 となり、昭和8年に兵器採用されたのち特型駆逐艦を始めして艦隊の巡洋艦及び駆逐艦に逐次搭載され、九三式魚雷出現までの旧海軍の主用魚雷となったものです。

下図がこその九〇式魚雷の機関系統の略図です。 説明のために極めてシンプルなものにしてあります。




初期の圧縮空気だけによるいわゆる冷走魚雷や電池魚雷などを除くと、旧海軍の熱走魚雷の燃料は基本的に 「ケロシン」 (kerosene) です。 これを利用したものがジェット燃料やロケット燃料などして使用され、また石油ストーブで使われる軽油もその一派生物ですので皆さんよくご存じと思います。

ケロシンは石油の分留成分ですから、基本的に炭化水素を主成分とする無色の液体です。 これを空気と混ぜ合わせて燃焼させ、発生するガスの圧力によって主機 (もとき、エンジン) のピストンを作働させて、そのクランク軸によって推進軸を回転させることになります。

いわゆるレシプロ・エンジンで、九〇式では2気筒復動式横型のものが使われており、これによって413馬力の推進力を得ています。


魚雷が発動されると、まず気室の圧縮空気が調和器から加熱装置 (燃焼室) 経由で主機のシリンダーに送られ、この空気圧によってピストンを発動します。

この主機の発動に併せて調和器から圧縮空気が清水室に送られ、この空気の圧力により真水が押し出されて燃料室に入り、燃料を加熱装置内に噴霧します。 そして火管によってこの燃料と気室からの空気に点火し、その燃焼ガスの膨張圧によって主機を運転します。 なおこの真水の一部は加熱装置の冷却にも使用されます。

調和器は主機の回転状況をフィードバックしていますので、これにより起動から点火までの遅動を設定できるため、冷走 (燃料に点火せず圧縮空気だけで主機が回ること) や過熱の発生を防ぐことができます。

そして、設定された雷速に応じた燃料の濃さ (即ち清水室に入る圧縮空気の圧力) とそれに応じる気室からの空気量となるように調節する機能を持っています。

また圧縮空気は操舵装置の動力源ともなりますので、気室は容量の大きなものが必要となり、このため魚雷の内部容積の制約から、航続距離、雷速と弾頭の炸薬量との兼ね合いの問題が生じるわけです。







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 最終更新 : 25/Mar/2017