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「触雷」 : 潜水艦の場合




水上艦艇と異なり、潜水艦の場合はいつ頃から旧海軍においてこの 「触雷」 が問題視され始めたのかはよく判りません。 しかしながら、潜水艦においてもこの問題の解明と対策が重要な事項とされていたことは残された各種史料からもハッキリしています。

これら内、特に今井賢二海軍大尉 (当時、兵67期) が海軍潜水学校の高等科学生時代に研究した史料 (以下 「今井史料」 という) は大変に貴重なものであり、幸いにしてこの問題の詳細について知ることができます。

この今井史料により、九五式魚雷改二においても、旧海軍はきちんとした研究とその対策が進められていたことが判ります。


潜水艦の場合は、水上艦艇による雷撃に比べると雷道に影響を与える要素はかなり緩くなります。


     1.空中雷道がない
     2.発射母体たる潜水艦は低速 ( 発射時最大 4ノット )


ところがそれでも触雷が発生するのです。 その原因については今井史料の中で前後触雷、左右触雷、上下触雷に分けて詳しく解析がなされています。


imai_shokurai_01_s.jpg

( 今井史料より )



この研究により、例えば、斜進角無し (発射進路 = 魚雷針路) の場合で左右触雷発生の確率からする左右距離間隔は次のとおりです。


sub_torp_shokurai_01_s.jpg

( 同 上 )



この表で、触雷確率をほぼゼロとするには駛走距離300の時に10.8m、同3000mの時に67.1m以上の横距離がなければなりません。

そして、それらの横距離を取るためにはためには、発射時の開角によって魚雷どうしが離れるようにする必要がありますが、その必要となる開角は次表のとおりです。


sub_torp_shokurai_02_s.jpg

( 同 上 )



つまり、ほぼ横方向における触雷の確率をほぼゼロとするためには、駛走距離300mの時に2.1度、同3000mの時には1.27度以上が必要ということになります。

同様にして、上下、前後についても触雷が生起しないための発射諸元が求められており、これらを総合した対策及び発射管の発射順序、発射時隔、開角などについての射法案が示されています。

例えば、2本の斉射を行う場合には2本の魚雷に開角を持たせる (左右に開く) ことになりますが、旧海軍の九五式魚雷の場合、斜進角が0度 (そのまま真っ直ぐ進む)の時は12度 (右と左に6度ずつ) の開角 を持たせることとされていました。

また、並行というか、大きな開角を持たせないで撃ちたい場合、あるいは2本以上を撃ちたい場合も多いわけで、この場合には発射間隔を持たせて連続発射することがやはり一番有効になります。 旧海軍で 2本の連続発射の場合では、開角3度の時に3秒の間隔 とされています。

この様に、旧海軍では 潜水艦においても頻繁に 「触雷」 が発生する ことを把握しており、そしてその対策が研究され、講じられていたということです。







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 最終更新 : 03/Mar/2014