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2-4-6.イスタンブール



 ツーロン → イスタンブール


昭和49年8月23日(金)朝9時 フランスのツーロンを出港して、トルコ第1の都市イスタンブールに向かいます。




(西日を背にする 「あおくも」)

ツーロンからは最短コースを採るためにコルス島とサルジニア島の間のボニファシオ海峡(最狭部で幅4マイル)、そしてイタリア半島の靴の先とシチリア島の間のメッシナ海峡(最狭部で幅2マイル)を抜けます。 前者のボニファシオ海峡は24日(土)の夜明け頃、後者のメッシナ海峡は25日(日)の午前でした。





メッシナ海峡を抜けたあたりから、次第に煙突に赤い帯が特徴のソ連船も散見されるようになってきました。







また、有名な某海面(どこかご存じの方は相当なツウ (^_^; )で錨泊するソ連艦艇を遠望。





ソ連海軍の情報収集船(AGI)に遭遇し、一時追尾されることも。







そして、ギリシャ南端のキチラ島とクレタ島間のギゼラ海峡を抜けてエーゲ海のいわゆる“多島海”に入ったところからダーダネルス海峡入口までは、練艦隊の2隻は折からのギリシャとトルコ間の 「キプロス紛争」 による不測事態に備えて警戒航行としました。


この警戒航行では、訓練などは行わず艦内哨戒配備を維持し、3インチ砲の砲側弾薬格納庫には実弾を準備しました。 私達実習幹部もそれぞれの割当に従って配置に就きました。





ダーダネルス海峡は8月27日(火)の午後 通峡しましたが、長さ35マイル、最狭部で幅1マイル弱で、古代から第1次大戦までの歴史と数々の遺跡や建物などがあるところで、当直時間以外の時は色々とこれらを遠望できました。 ただ、練艦隊としては皆あまり関心が無いような ・・・・


ダーダネルス海峡入口近くのヒサルルク丘陵にある第1次大戦におけるトルコ軍の殉教者記念碑。 現在はこの周辺は大変立派な国立公園になっています。




( 遠くからも良く見える大きな殉教者記念碑 )


( Google Earth より 赤丸 が記念碑)

(注) : チャナッカレ(Canakkale)というのはダーダネルス海峡最強部のトルコ本土側にある街ですが、このガリポリ半島南端にある殉教者記念碑も 「チャナッカレの」 と呼ばれています。



最狭部にある キリトバヒール(Kilitbahir)要塞。 これも今でも現存しており綺麗に維持・管理されて観光名所の一つになっていますね。




( 良く見える キリトバヒール要塞 )


( Google Earth より 赤丸 が要塞 対岸がチャナッカレの街 )


有名なトロイの遺跡もありますが海上からは見えませんので、自分で艦橋に上がり海図で確認して今の艦位からだいだいこの方向と (^_^)




( 正面奥の丘の向こう側にトロイの遺跡、多分 )


( Google Earth より 赤丸 がトロイの遺跡 )


 イスタンブール入港(錨泊)


イスタンブールでは岸壁・桟橋への横付けではなく、ドルマバフチェ(Dolmabahce)宮殿の前に錨泊ですから、寄港事前準備・調整のための仮泊は無く、8月28日(水)直接入港です。


ボスポラス海峡に入り、目立つ6本尖塔の スルタンアフメト寺院 と4本尖塔の アヤソフィア寺院、そしてトプカピ宮殿の沖を通り、更に奥へ。 こういう海側から見た写真は珍しいかと。












( トプカピ宮殿下の Sarayburnu という公園を回った奥に見える スレイマニエ寺院(上)とリュステム・パシャ・ジャーミイ寺院(下) )


「あおくも」「かとり」の逆順で、登舷礼による礼砲を行いつつ 午前11時 ドルマバフチェ宮殿前の指定錨地に投錨です。




( 正面がドルマバフチェ宮殿 )


( 目の前には海峡を跨ぐ ボスポラス橋(2016年に「7月15日殉教者の橋」と改名) が )


この宮殿は当時はまだ迎賓館となっており、ここの沖は来訪する外国艦隊の錨地としては最高のところといえます。 とはいっても、直ぐ近くには多くの大型客船が停泊する立派な岸壁があったのですが。




( 当時は迎賓館となっていたドルマバフチェ宮殿  一般の人はまだ入れなかったと )


( 近くの岸壁には大型客船が多数 )


 イスタンブール


イスタンブールに入港した8月28日(水)の午後はトルコ海軍北海域司令部によるトルコ海軍についてのブリーフィングが「かとり」実習員講堂で行われました。


翌8月29日(木)は午前中に在トルコ大使と在イスタンブール総領事による講話が「かとり」実習員講堂で行われ、またこの日と記憶していますが、艦上昼食会に参加したイスタンブール州知事に対して退艦時に礼砲を行ったと。


そして、確かこの29日の夕刻に在イスタンブール総領事公邸で歓迎レセプションがあったと記憶しています。



3日目の8月30日(金)はトルコ3軍記念日で、在泊の「かとり」と「あおくも」は、昼間は満艦飾、夜間は電燈艦飾を行ってこれを祝福しました。 狭いボスポラス海峡のイスタンブール港内で錨泊しての満艦飾と、特に夜間の電燈艦飾は目立つ存在であったと思います。



4日目の8月31日(土)はトルコ海軍兵学校の卒業式があり、司令官以下と実習幹部の半数が参列でした。 私は居残り組で、昼間は停泊当直で艦橋に就いておりました。 この時の実習幹部半数ずつの振り分け方は良く判りません。



因みに、トルコの海軍兵学校は、イスタンブールの南東約33kmのツゥズラ Tuzla というところの半島の先端にあります。 この兵学校の卒業式に参列した司令官以下と実習幹部の半数は陸路ではなく借上げの交通船を利用しましたが、片道約2時間を要したとされています。 とは言っても、多分途中の陸沿いの景色はなかなかのものであったであろうことを考えると、往復時間を入れても有意義なものであったろうと思います。



( Google Earth より 赤丸 のところがトルコ海軍兵学校所在地 )


( Google Earth より 卒業式典は2面ある陸上競技場の左側で行われたようです )


( 「かとり」アルバムより 卒業式典のスナップ )


私達がこの日の艦橋当直勤務での時に、艦橋内で司令部当直幕僚とちょっとした一悶着が起き上がり、詳細は省きますが、用兵幹部では無かったとはいえ当該当直幕僚はこの一件をもって以後海自幹部として学ぶことは何も無い(反面教師として以外)ということが明らかに。



 イスタンブール市内研修


イスタンブールに寄港した3日目の8月30日(金)は、午前一番で防衛駐在官によるトルコ事情の講話が「かとり」実習員講堂で行われた後、陸上に上がって借上げバスに分乗して市内研修です。 とは言っても、例によって「かとり」幹部の引率のもと添乗ガイド無しで、しかも「市内研修」とは名ばかりで、旧市街のトプカピ宮殿近くで降ろされて “あとは自由に回ってこい” と言われただけで終りでした。


仕方がないので、取り敢えずはトプカピ宮殿内を散策。 あちこち回りましたが、様々な建物や豪華な諸室などは全く記憶にありません。 ともかく皆で港の眺めが良いところで記念撮影を。




( 遠くに錨泊する「かとり」と「あおくも」が望めます 両艦は満艦飾を行っていたはず )

トプカピ宮殿はこの頃はまだ今のように綺麗に整備されてはいませんでしたが、それだけに逆に元々の素朴な様子が残っておりました。 しかも観光客はほとんどいなかったような。 かつ入場料などを取られた記憶がありません。 (制服を着ての “研修” 名目ですから個人負担は建前上一応ありませんので)



ただこれは凄いと思ってパチリと一枚。 宝物館の装飾品の数々のうち、86カラットの スプーン・ダイヤモンドと呼ばれる大きな涙滴型の飾りです。 宝物館が改修中なのかどうか、現在のところこれらは公開停止となっているようですね。




( 展示品の装飾品の中でも一際目立つ スプーン・ダイヤモンド )


( 当時の絵葉書より )

トプカピ宮殿で結構時間を費やしましたが、あとは公園で時間まで。 寺院などの中は見学しませんでした。 イスラム教のしきたりなどは判りませんので、制服を着た幹部が失礼があっては、と。




( ブルー・モスクで知られる スルタンアフメト寺院 をバックに )

中にはトプカピ宮殿の見学などは早々にして、ちょっと離れたグランド・バザールまで見学と買い物に出かけた者も結構いたようです。 グランド・バザールは大変に広く、かつ中は小さなお店が沢山並んでゴチャゴチャ入り組んでいるところですが、行った者から聞いたところでは一見の価値はあったと。 う〜ん。


結局のところ、イスタンブール市内研修は公式記録では朝9時半から夕方16時頃となっていますが、この旧市街のトプカピ宮殿付近でバスを降ろされて自由見学となった後はバスでここ以外に市内の他の場所を回った記憶がありませんが ・・・・ ?



 イスタンブール出港


イスタンブール寄港は4日間で、9月1日(日)朝9時に抜錨し出港し、来た時の逆航路でマルマラ海、ダーダネルス海峡を抜けてエーゲ海の“多島海”に入り、ギリシャの首都アテネの外港 ピレウス に向かいます。


やはりイスタンブールでも、上記のトプカピ宮殿など以外では、実習幹部として目の前のドルマバフチェ宮殿はおろかその他の著名な場所や建物などは全く見ておらず、ガイド付きの研修は無理としても、せめて1日か昼間の半日の自由上陸があって市内散策ができていればと感じた次第です。







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最終更新 : 14/May/2023