次の項目及び順序で説明します。
(注): 砲熕武器に関する名称及び用語は、旧海軍/海上自衛隊と旧陸軍/陸上自衛隊とではかなり異なります。 その一例は下表のとおりです。
「砲」 の一般的な構造
当サイトを見にきて下さる皆さん方は、もちろんこのようなものでは満足されないでしょうから、もう少し詳しいものでご説明します。 以下のものは、典型的な例として一応米海軍で第2次大戦中に幅広く使用された5インチ/38口径の単装砲をイメージに作図していますが、基本的な構造は他の砲でもほとんど大同小異です。
(注) : 具体的な個々の砲の構造、構成については、「旧海軍の砲術」 コーナー及び「米海軍の艦砲射撃」 コーナー中の該当項目を見て下さい。 「砲身」 の一般構造艦載砲の薬嚢を使用する型式の砲身の、最も基本的な構造を下図に示します。
砲の長さを表す用語に 口径長 と言うのがありますが、この口径長は、尾栓の前面から砲口までの長さを砲の口径で割った値 のことで、砲弾の威力や射程を示す一つの指針になります。 口径長はほぼ上図に示す砲中の長さに薬室長を加えた値になりますが、厳密には異なります。 艦載砲の中〜大口径砲の一般的な構造は、いわゆる積層砲 (層成砲身) になっており、下図にその概略の一例を示します。 米海軍の古い教科書のもので、各部の名称が英語表記のままにしてあります。 ここでは砲身の構造についての概略のイメージをつかんで頂くことにして、日本語の名称は省略します。 砲尾の部分のもう少し詳しいものは、下図のとおりです。 砲尾から薬室を通って砲中までが単なる“筒”ではなくて、複雑な構造をしていることを理解して下さい。 (注): 何故か導環を示す矢印の位置が違っています。 もう少し後ですね。 下図の左は、米海軍の8インチ砲の旋条を砲口側から見たものです。 下図の右はその旋条を図示したもので、ここにも示されているように、砲の 口径 とは 旋条の山 (Land) の砲内内径 を意味します。 (注) : したがって、例えば 「大和」 の46糎砲とはこの内径のことですから、当然のことながらその砲弾の弾体の直径は46糎より僅かに小さい値ですし、また逆にその砲弾の導環部の直径は46糎より大きく、かつ旋条の谷 (Groove) の内径より僅かに小さい値になります。 「砲尾環」 の一般構造前項で述べたとおり、米海軍では砲尾環はその形からも、スライド式尾栓を有するものを 「Housing」、また螺式尾栓を有するものを 「Yoke」 と呼んでいます。 下に、スライド式尾栓の砲尾環の場合の砲身と砲尾環との結合部の例を示します。 砲身と砲尾環との結合方法はいくつかありますが、この図は 隔螺式 の ねじ込み式 で小〜中口径の速射砲に多く見られます。 次に螺式尾栓を使用する尾栓環 (Yoke) の例として、米海軍の16インチ/50口径砲を示します。 「尾栓装置」 の一般構造尾栓装置は尾栓とその開閉を行う閉鎖機 (尾栓開閉装置)、及び発火装置などで構成されています。 尾栓はその型式として、スライド (鎖栓) 式と螺式の2つがあり、それによって閉鎖機の構造も大きく異なっています。 スライド式は、小〜中口径砲の速射砲に多く用いられる型式で、螺式は、中〜大口径砲に用いられます。 (1) 螺 式 螺式の尾栓の代表的な構造の一例を下図に示します。 細かいことはともかく、尾栓と砲尾環の尾栓室との間から装薬の燃焼ガスが漏れないよう密封するための工夫がなされていることを理解して下さい。 下図は、螺式の尾栓を有する大口径砲の一例として、米海軍の14インチ砲の尾栓装置の構造とその作動状況を示します。
(2) スライド式 下図は、スライド式の尾栓装置の一例です。 スライド式は、自動式又は半自動式の装填装置を有する小〜中口径砲に見られます。 装薬に薬莢を使用する固定弾薬及び半固定弾薬の装填に便利なようになっていますが、構造的に大口径、大砲内圧の砲、特に薬嚢を使用するものには向きません。 なお、スライド式には上下にスライドする方式と左右にスライドする方式がありますが、どちらも機能的には同じです。 (3) 発火装置 スライド式にしても螺式にしても、尾栓装置の役割の第1は弾丸の発射のために高圧ガスを生成する装薬 (発射薬) の爆燃のための密閉区画を作ることですが、その第2がその密閉完了後に装薬に点火することです。 この装薬に点火する装置が 発火装置 (Firing Mechanism) と呼ばれるもので、尾栓に装備されています。 下図は、左がその概念で、右が具体的な米海軍の3インチ/50口径砲の例です。 次の 3.弾火薬 の項で説明しますが、装薬に点火する火管 (Primer) には撃発式と電気式 (又はその両方の機能を持つ複合式) があります。 したがって、発火装置もそれに応じたものが必要です。 下図に、一例として米海軍の5インチ/38口径砲に使用されている発火装置を示します。 図でお解りのように、この発火装置は撃発式と電気式の両方を有していますが、砲のそのものの機能としては電気式の方が常用で、撃発式は電気式で不発となった場合の予備(補用)です。 「砲鞍」 の一般的な構造砲鞍の基本的な役割は、次の3つです。 (1) 砲身及び砲尾環を支えるとともに、砲尾軸によって砲の俯仰の支点とする。 (2) 駐退推進装置を備え、発砲による砲身及び砲尾環の後退エネルギーを吸収するとともに、これを準備位置まで戻す。 (3) 尾栓装置と連携して、砲弾の装填や発火のための関連機器を装備する。 下は、米海軍の5インチ/38口径砲をイメージした砲鞍の概念図で、スライド式尾栓を使用する場合の砲鞍の例です。 砲身及び尾栓環は、左が通常の位置の状態 (前進位置) で、右が発砲により駐退した状態 (後退位置) を示します。
最終更新 : 27/Apr/2014 |