方位盤とは




 方位盤(高射機)とは


方位盤 とは、目標を照準することにより、発砲諸元を計出する上で必要な 「現在方向角」 及び 「高角」 を測定する兵器です。 そして、この 「現在方向角」 に加えて、航空機の発達とともに要求された高射性能を満たすために、目標の 「現在高角」 をも測定するものが 高射機 です。 即ち、言い換えれば高射用の 「方位盤」 が 「高射機」 であるといえます。

即ち、方位盤にしても高射機にしても、これらは一種の照準用兵器であって、これが方位盤の最大の目的です。

また、方位盤 (高射機) は照準を各砲ごと個別に行う必要が無く、一ヶ所でできるだけでなく、電気的に砲の発射を行う場合には方位盤側で引金を引くことも出来るので、全砲の射撃を斉一にすることが出来ます。




 方位盤 (高射機) の利点


各砲ごと砲側で照準する方法に比較して、方位盤を用いることにより次の利点が得られます。


(1) 方位盤は砲から離隔して任意の場所、あるいは高所に装備することが可能ですので、遠距離平射に適します。 また、砲煙、海水飛沫、敵弾による水柱などによる照準の妨害をより避け易くすることができます。

(2) 照準を射撃指揮官等の手元で行うので、射撃指揮全般の把握に便利であり、目標指示が容易で、かつ目標捕捉は迅速で確実です。

(3) 方位盤は、一般的に砲に比較して軽量、軽快ですから照準が容易であり、砲側照準に比較して発射間隔を小さくし、発射弾数を多くすることが可能となります。

(4) 一ヶ所で照準できるだけでなく、方位盤側で電気発射管制を行うならば、多数砲の射撃を斉一にすることができます。 したがって、平射 (水上射撃及び陸上射撃) を容易にすることができ、また間接射撃の実施も容易になります。

(5) そのほか、射弾の集中及び分散を任意に調整できるし、また各種の打方を行うのに便利で、砲の運用法の柔軟性を増加させることが出来ます。




 方位盤 (高射機) の構成


平射用方位盤 は、射撃盤出現以前に誕生したものであるので、方位盤の当初の目的は単に目標の 現在方向角縦動揺横動揺 を測定し、かつ 照準器 として計画されたものでした。

したがって、その構成としては 砲軸角計出機構動揺修正機構占位差修正機構 及び 苗頭修正機構 等をも備えたものでした。

このため、方位盤を有する射撃指揮装置を 方位盤射撃装置 あるいは 方位盤照準装置 等と呼び、太平洋戦争終戦頃までその名称が一部に残っていたのはこの様な経緯があったからです。

これに反して、高射機 はその歴史が新しく、当初から高射射撃盤と一体として計画されましたので、その目的は単に目標の 「 現在方向角」 「現在高角」 と 「縦動揺」 及び 「横動揺」 等を測定するだけで、その他の諸計算機構は全て射撃盤内に組み入れられていました。

しかし前述のとおり、平射用方位盤も、射撃盤の出現とともにその諸計算機構の一部を射撃盤内に組み入れられ、更にその後設計された方位盤ではその計算機構の大部分を射撃盤内に組み入れられており、現在における一般的な型式の方位盤となりました。

したがって、平射用方位盤と高射機とはその構成機構には、次のように大きな差があります。


(1) 高射機の主要構成機構
   A. 目標照準機構
   B. 動揺照準機構


(2) 平射用方位盤の主要構成機構
   A. 目標照準機構
   B. 動揺照準機構
   C. 動揺修正機構
   D. 占位差修正機構
   E. 砲軸角計算機構
   F. 苗頭修正機構 等

  ( ただし、E及びF、あるいはDが組み入れられていないものもある )



これら方位盤と高射機の変遷などについては次項の 射撃指揮装置発達史 をご覧下さい。







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 最終更新 : 20/Apr/2014





射撃指揮装置概説

 1.射撃指揮装置とは

 2.方位盤とは

 3.射撃盤とは