射撃盤とは




 射撃盤とは


射撃盤高射射撃盤) とは、要するに方位盤(高射機)で得られた目標の 「現在方向角」 「現在高角」 及び測距儀で得られた 「測距離」 などから 目標現在位置諸元 を求め、更に循環操作によって彼我の運動による各種の見越を計出し、これらを現在位置諸元に加味して 目標未来位置諸元 を求め、これらの関数として所要の 発砲諸元 である 「仰角」 「旋回角」 「信管分画」 を計出する一種の計算器です。

したがって、射撃盤はその型式によって設定された計算式を解けるように適当な計算機構及び通信機器を連結していくならば構成できることになります。

射撃盤は、一連の計算装置ですが、その計算原式は測定方式により大小の差こそあれ複雑で、これらを全て完全に説き得る (完全解法) ように機構化することは技術上極めて困難です。 このため、技術上の問題及びその使用目的に応ずる精度上の要求などにより、原式の一部又は大部分を省略するように設計するのが普通です。

射撃盤によって解こうとするこの省略された算式を 機構式 といい、機構式の設定の仕方及びこの解法に使用する計算機構及び通信機器により、色々な型式の射撃盤が発生することになります。

したがって、射撃盤は技術及び砲熕武器の進歩と戦闘様式の変化による兵術上の要求に応じて、次第に発達して行くものであると言えます。

旧海軍における射撃盤 (高射射撃盤) の変遷などについては次項の 射撃指揮装置発達史 をご覧下さい。




 一般的な計出諸元系統


発砲諸元計出における方位盤及び射撃盤での一般的な系統は次のとおりです。





 九八式射撃盤改一


「大和」 「武蔵」 に搭載された旧海軍最高峰の射撃盤である 九八式射撃盤改一 の特徴は次のようなものでした。


(1) 当日修正の大部分を機構的に算出

(2) 複式通信器の採用により精度を向上

(3) 経過図盤、分速盤、修正盤、測距平均盤及び敵針敵速測定盤を組み込み、これら各盤は相互に連結され、精度を向上

(4) 追尾装置の大部分を自動化し、費消時を短縮

(5) 敵針・敵速の測定を機構系及び光学系の組み合わせとして精度を向上

(6) 精度良好な「九八式転輪羅針儀」(砲戦専用のジャイロスコープ)を採用

(7) 北基準の真方位を使用

(8) 弾着時計は、従来のものと全く趣を異にし、大部分を電気的作動とし、印点及び通報を自動化



下に示しますのは、今に残れる 「九八式射撃盤改一参考書」 (横須賀海軍砲術学校 昭和19年) の表紙です。






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 最終更新 : 20/Apr/2014





射撃指揮装置概説

 1.射撃指揮装置とは

 2.方位盤とは

 3.射撃盤とは