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第7話 地球自転の影響について




  艦砲射撃における特徴
  海上自衛隊の場合
  旧海軍の場合
  米海軍の場合 ← 現在




 米海軍における理論的説明


米海軍における艦砲射撃での地球自転の影響について理論的に解説したものは、Ernest Edward Herrmann が海軍兵学校の教科書としてものした 『 Exterior Ballistics 』 (US Naval Institute Press, 1935) に書かれています。




実は、米海軍では1930年代まではこの問題については関心をもっておりませんでした。 Herrmann の同書でもこの1936年の第3版になって加筆されております。 米陸軍に遅れること10年以上です。

艦砲射撃における地球自転の影響についての理論的な説明の仕方は、旧海軍及び海上自衛隊と全く同じです。 X、Y、Zの各要素の名称も、現在の海上自衛隊と同じで次のとおりです。


X効果 → X component

Y効果 → Y component

Z効果 → Z component


( 例 : X component の説明図 )




 米海軍における算式


米海軍における地球自転の影響による縦偏差 (射距離差) ΔXΩ 及び横偏差 (苗頭) Ω の理論式は次のとおりです。




ここで、

ℓ : 発射地点の緯度 (赤道を 0°とし、北緯は 0~90°、南緯は 0~-90°)

a : 発射方位 (北基準)

A、B、D : 係数

そして A、B、D の各係数は次の算式で表されます。




ここで、

X : 射距離

T : 飛行秒時

φ : 射角

ω : 落角

この各係数について、55口径8インチ砲で弾量 335 lb、初速 2500 f/s の場合をグラフにすると大凡下図のようになります。





 米海軍における射表


米海軍における射表において、地球自転の影響による修正表が加えられたのは、前述の理論的説明と同じ時期の1930年代になってからでした。

射表では、この地球自転の影響は縦 (距離) 偏差と横 (苗頭) 偏差との2つ表が付録として記載されています。 これは旧海軍がその作成を躾として教えたのと同じ様な表ですが、現場で一々作らなくとも射表に入れてあったわけです。

例えば、先の55口径8インチ砲で弾量 335 lb、初速 2500 f/s 用の水上射表では、縦偏差については次の様になっています。




この表に基づき、実際の射距離及び緯度に応じて比例配分した値を、発砲諸元に修正を加えるようになっています。

また50口径16インチ砲で弾量 2700 lb、初速 2500 f/s 用の水上射表では、同じく縦偏差について次の様になっています。




上の8インチ砲の表と比較していただければ、砲及び砲弾の違いによる地球自転の影響の大きさがどの様に現れるかを具体的に把握していただけると思います。




 米海軍の射撃指揮装置への適用


米軍では8インチ砲以上用の射撃指揮装置は、旧海軍の射撃盤に相当する Rangekeeper Mk-8 ですが、九八式射撃盤のように射撃地の緯度を入力することにより自動で地球自転の影響を補正するような機構はありません。 したがって、射表に基づき計算した値を手動入力して直接射距離及び苗頭を修正することで対応しています。







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 最終更新 : 13/Mar/2016