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塩分除去法 |
既にお話ししたように、九三式魚雷は燃料の噴射や加熱装置の冷却などに九〇式魚雷までの真水に替えて海水を用いました。 このためその管系統に塩分が付くことはもちろん、加熱装置及び主機のシリンダー内には塩分が析出しますので、これらの対策が必要になりました。
この塩分除去のために採られた方法は次の2つです。
燃料室から加熱装置までの管系統では、海水中の塩分はそれほど気にすることはありませんが、問題なのは加熱装置での燃焼以降です。 特にノズル部分に塩分が貯まって詰まることで、これは致命的となります。
このため、まずアルミの粉を吹き付けてみてノズルの適切な形状を探ろうと実験してみましたが、結局これは上手く行きませんでした。
そこで考え出したのが、二塩化亜鉛 (ZnCl2) を少量燃料に加えることにより塩分の析出を減らすことで解決しました。 この二塩化亜鉛を用いる方法は、試製魚雷F (駆逐艦用タービン魚雷) の開発を担当していた成瀬正二造兵中佐のアイデアであったとされています。
加熱装置で発生した燃焼ガスをこのシリンダー内に吹き込むことにより、その膨張によりピストンを動かしますので、最終的にここに海水の塩分が析出することになります。
これの全てを残ったガスと共に外に排出することは出来ませんので、次第にこの中に貯まってくるわけですが、シリンダ・ヘッドを銅板製にして適切な形状とすることによって、この銅板の変形によってここに析出物を受け入れる余積を作ることで解決しました。
これは試製魚雷庚の段階で解決しております。
なおこれら2つの塩分除去法については、九五式魚雷でも採り入れられています。
( 九五式魚雷二型構造略図 )
今回のブログ記事はこの塩分除去のことをお話ししようと思って始めたものですが、それにはまず機関系統のことを、ということで長くなってしまいました。
旧海軍の魚雷については、主機のことに限らず、舵機や操舵関係、爆発尖などなどのメカについては沢山話題がありますが、これらは後日また機会があればということに。
最終更新 : 25/Mar/2017