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射法理論 (その3)



 魚雷の効果


  (1) 関係術語の定義





奏効角 (ψ) : 目標の中央を照準して、目標の艦首から艦尾までの間に命中する角度差

無効角 (ψ’) : 照準艦とその次の艦との端末間の命中射角の差

奏効比 : 次で表される比率




戦隊奏効角 : 目標戦隊の中央艦を照準した時に、先頭艦と最後尾艦に対する命中射角の差 (上図の ∠C6AC1



  (2) 奏効角 (ψ)


魚雷の効果は、目標の大小によって左右されると共に、射程 (R) の大小に影響されます。 したがって、目標と魚雷の効果の関係を表すには目標の艦首尾両端に命中すべき射角の差 (角度) で表すのが最も適当であり、この角度を奏効角と言います。

また、目標が動的である場合は、その艦首及び艦尾に命中すべき角度の差 (=即ち目標長を動的散布間隔とする場合) が動的に対する奏効角となります。 したがって、その値は照準距離 (D)、方位角 (B) 及び射角 (A) によって異なってきます。

前図において魚雷が2番艦艦尾 (D3) に命中した場合、他の魚雷は C4 において同艦の艦首に命中することになります。 即ち、C3 とC4 の間の魚雷は全て命中する訳であり、この角度 (∠C4AC3) が 奏効角 (ψ) です。

奏効角 (ψ) は、次のように動的散布間隔と同様にして求めることができます。




上の式から、奏効角の性質は、


イ. 目標が大きくなる程、また照準距離が短い程、有利となる。

ロ. Sin(A+B) が最大の時、即ち A+B = 90度の時に奏効角は最大となる。
例えば、射角 (A)= 20度とすると、方位角 (B)= 70度の場合に最も奏効率が大きくなります。




  (3) 無効角 (ψ’)


無効角を求める式は、奏効角と同じです。 ただし、目標長 (=的長) の代わりに、目標間の水面距離を用います。



  (4) 奏効比


奏効比は、奏効角と無効角の比率によって、編隊目標に対する魚雷の効果の検討に用いることができます。

奏効比の求め方は、前述の術語の定義のところのとおりですが、単縦陣と単梯陣の場合とではそれぞれ次のとおりです。


イ. 目標が単縦陣の場合




ロ. 目標が単梯陣の場合




そして、奏効比の性質は次のとおりとなります。


イ. 奏効比は、I に比例し、Lに反比例します。

ロ. 方位角 (B) 及び照準距離 (D) とは無関係です。

ハ. 奏効比 =1 の場合とは、下のような態勢の場合であり、目標面全部が奏効面であることを表します。





ニ. 列線方位角 (β) が一定の時、単艦方位角 (β+α) = 90度の場合に奏効比は最大となります。



  (5) 戦隊奏効角


遠距離から敵の戦隊に対して発射する場合には、魚雷を戦隊列線内に到達するようにするのが通例です。 この戦隊に対する奏効角を 戦隊奏効角 といいます。

戦隊奏効角は、奏効角を求める式において、的長 ( I ) を隊列長に置き換えれば良いことになります。 また、略算的には先頭艦と最後尾艦の艦中央命中射角の差を求めても可です。


  (6) 衝撃に関する事項


既に 「射三角細説」 の最後のところで少しご説明しましたが、衝撃に関する事項は次のとおりです。


イ. 横衝撃 : 交角が90度で魚雷が目標に衝撃するもの

ロ. 逆衝撃 : 交角90度以下の衝撃

ハ. 追衝撃 : 交角90度以上の衝撃

ニ. 撃  角 : 魚雷命中時に、目標面上の切線と魚雷の縦軸線とのなす角

ホ. 横衝撃射点 : 横衝撃が得られるような射点 (例えば、射角 (A) = 30度の場合、方位角 (B) = 60度となる射点)

ヘ. 最小有効撃角 : 魚雷の爆発尖が有効に爆発するための最小の撃角 最終有効撃角を得られる雷速を V kt とすると、この交角の最小制限は次の式で求められます。





  (7) 有効な射点


これまでご説明してきたことの総合として、魚雷発射において可能な限り追求すべき有効な射点を纏めると、次のようになります。


イ. 目標が単艦の場合
照準距離 (D) を可能な限り詰める (=肉迫する)
横衝撃射点 (方位角 (B) = 60〜70度付近)

ロ. 目標が単縦陣の場合
奏効比は一定であるので、可能な限り奏効角を大きくする。 即ち、極力照準距離 (D) を詰め、かつ敵の戦隊に対して横衝撃射点に占位すること。

ニ. 目標が単梯陣の場合
奏効比を可能な限り大きくする。 (できれば奏効比 =1となる射点)
奏効角を大きくする。 即ち、敵戦隊の列線に対する交角90度 (方位角 (B) = 60〜70度) となる様な射点



  (8) 命中公算


イ. 静的に対する多数魚雷の命中公算 :


(イ) 各射線ごとの偏倚量 (X) を求める

(ロ) 動的公誤 (r0) を求める

(ハ) 的長 ( I ) とこの偏倚量 (X) 及び動的公誤 (r0) により各魚雷の命中公算を求める



ロ. 予期命中雷数 : 上記イ.の各射線の命中公算の和を求め、これに到達率を乗じて求めます。

ニ. 単艦に対する命中公算 : 動的公誤 (r0)、発射中心偏倚量 (X)、及び動的散布間隔 (d0) により求める。

ホ. 戦隊に対する命中公算 :


(イ) 単縦陣の場合
1発の魚雷の命中公算は、奏効比
多数魚雷の命中公算は、(列線通過雷数) x (奏効比)

(ロ) 単梯陣の場合
1発の魚雷の命中公算は、単梯陣奏効比
多数魚雷の命中公算は、単縦陣に同じ

(ハ) 予期命中雷数は、上記の命中公算に到達率を乗じたもの


(注) : 命中公算については、これの説明を始めると大変長いものになりますので、機会があれば単独に別項としてご説明したいと思いますので、上記のとおりの簡単なものに留めます。





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 最終更新 : 27/Aug/2011