砲火指揮法




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 砲火指揮法の原則


  1.砲火指揮官


艦長は一艦の戦闘の全般を指揮し、砲熕射撃の指揮は砲術長をして直接これを担当 させます。 これを 砲火指揮官 と言います。 

一艦の備砲が2種以上であり、一人の指揮でこれら全てを統率することが不利となる時は、砲熕の性能・任務が類似するものを二分 して二人の指揮官により別々にこれを指揮させますが、この場合主要な砲群の指揮官を砲火指揮官と言い砲術長をもってこれに充て、他の砲群の指揮官を 砲火分担指揮官 と言い砲台分隊長をもってこれに充てます。

このどちらに属するかを問わず、その一部の砲熕あるいは反対舷の砲熕によって他の目標を射撃する場合 に、これに応ずるために更に一人の指揮官を置き、これを 分火指揮官 と言い砲台分隊長をもってこれに充てます。

距離時計を使用する射撃において は、時計1個について砲台分隊長又は適任の尉官1名を配置して指揮官の意図に従って射撃に関する一切の命令・号令を砲台に伝えさせます。 これを 射撃号令官 と言います。


なお、2種以上の砲熕を一人で指揮することを 合同指揮、二群に分けて別々に指揮することを 分担指揮 と言います。 



  2.砲火指揮系統



(注) : 点線は同一目標を射撃する場合における砲火指揮官の監督系統を示す。 



  3.艦長及び各指揮官の責務


艦長は射撃に関して次の事項を下令します。


ア.射撃目標 

イ.使用砲種及び弾種

ウ.打方の種類 

エ.射撃の開始、中止、終止


各指揮官は艦長の命令に基づき上記の系統により射撃を指揮しますが、担任すべき責務は概ね次のとおりです。 


ア.射撃に関する艦長の命令・号令の伝達 

イ.弾着観測

ウ.射撃諸元の決定及び修正 

エ.照準点の選択 

オ.必要な場合の一時打方中止 


ただし、艦長の命令中のイ.及びウ.、及び各指揮官の責務中のエ.については予め指示しておくことにより、前者は各指揮官に、後者は射手に委任することができます。 



  4.各指揮官等の位置


各指揮官は射弾の観測に便利な位置を選び、また射撃号令官は敵弾に対して安全な位置にあって、それぞれその周囲に任務遂行上必要な機関を編成します。

当時としては砲火指揮官は前檣楼に、分担指揮官は前部司令塔(前部砲火指揮塔)に、分火指揮官は後部司令塔又は後檣楼に位置するのが通例とされていました。 

そしてこれらの場所を 射撃指揮所 と通称し、その所在又は任務に応じて冠称を付けるのが一般的です。 例えば、前檣楼(主砲)指揮所、前部司令塔(副砲)指揮所、後部司令塔(分火)指揮所などです。 

射撃号令官の位置は前檣楼若しくは前部司令塔直下の防御良好なる所を選んで、ここに一区画を設けて命令・号令の発受に必要な全ての通信器具を集めて射撃指揮の通信基地とし、これを 下部発令所 と呼びました。 そして下部発令所は更に、主砲、副砲、分火砲の各発令所及び高声電話交換室の4区画に分けるのが通例です。



  5.夜中水雷防御戦


夜間の水雷防御戦における射撃指揮は、特に次の方法によることとされていました。


ア.副砲以下の全備砲を前後左右の4砲群に区分し、砲台分隊長を以て各砲群の指揮官に充てる 

イ.各砲群には探照燈を分属させ各指揮官の専用とする

ウ.砲群指揮官は視界が広くかつ確実に射撃を指揮出来る位置を選び、下部発令所を経由することなく、また距離時計を使用することなく、専ら自己の直感的判断により射撃を指揮する

エ.砲術長は艦長の意図に従い、別の探照燈を使用して全般の警戒に当たり、状況変化の緩急に応じて砲群の射撃指揮を管制する


なお、副砲以下をもってしては水雷防御に不十分な軍艦にあっては、適宜大口径砲を砲群に編入することは妨げないこととされ、また探照燈の数が上記の要求を充たさない場合においては、適宜の区分法を採ることができるものとされていました。 



  6.号令・命令・通報の伝達法


射撃指揮上の号令、命令、及び通報は主として電気的通信器及び伝声管によって伝達するものとし、これらの諸器具の組合せによる通信組織を 砲火指揮通信装置 と呼びました。

優良な通信装置は、各部の適切な編成と相俟って諸般の状況に応じた射撃指揮を容易かつ確実に行うためには必須のものと言えます。 







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初版公開 : 08/Apr/2018







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