軍艦の速力




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 速力と他要素との関係


攻防力が同じ軍艦において他より優速を求めようとするならば、排水量及び船体長を増加することが必要となり、そしそれを行わなければ攻防力を多少犠牲としなければならないことは造船学上の原則です。

即ち、攻防力が等しい軍艦において速力を増加させるには直ちに馬力の増加を意味し、馬力の増加は速力の三乗に比例します。 このため最大速力付近における1、2ノットの増加は馬力に大きな影響を及ぼすことになります。

例えば「三笠」が最大速力18.5ノットに要する馬力は 16,400 であり、これより1ノット減速すれば 12,500 馬力で足り、逆に1ノットを増加させるには 30,900 馬力が必要になります。 そしてこの1ノットの増減に要する機関重量はそれぞれ 340 トンであるとされています。

したがって、仮にもし最大速力を 17.5ノットで満足するとするならば、この重量を攻防力に充てるるか、あるいは排水量を少し減すことができます。

したがって、速力の増加は排水量の増加の結果であると言えます。 これは速力は大きな排水量に伴うものであることは造船学上の原則とするところです。

反対に最大速力19.5ノットを得ようとするならば、単に機関重量の増加だけでは足りず、これによる排水量の増加は多少船体の形状を大きくし、これにより船殻重量の増加を余儀なくされ、更に防御艤装における増加及び高馬力に伴う載炭量の増加と相俟って、実際においては約3倍、即ち千トン程度の排水量増となります。

また、もし 340 トンを機関重量以外、即ち仮に攻撃力又は防御力のどちらかを削って補うとすると、6インチ砲を全廃するか、又は装甲を薄くする必要があり、戦艦としての性能を落とすことになります。


上記の他、高速は船体長の増加を必要としますが、ここれ馬力の増加を一旦置くとしても、なお船殻及び防御力重量の増加と操艦上の不便が伴うことを免れません。

その中でも操艦の便否は機関の回転力中の主要な要素であり回頭の斉一に影響するため、軽々しく見過ごすことはできない問題です。

即ち回頭の抵抗によるモーメントは船体長の三乗に比例するためこれの変更は直ちに操舵機に影響しますので、多くの配慮が必要であり相当な設備を施すとしても同一の旋回圏を得ることは不可能に近いことです。

したがって、例えば「薩摩」「安芸」で1隊を編成するような場合、たかだか0.5ノットや1ノットの優速を得ようとするよりも、寧ろ運動力が斉一となることに注意を払う方が戦術上有利であると言えます。


建艦政策上、同型艦を建造することは本来の戦術上の要求に基づくものであり、戦備あるいは予算上の要求は二の次の理由であるに過ぎません。

英海軍は既にこの利点に着岸して次々に斉一な艦隊を編成する一方で、片や仏海軍は徒に新しきを追い奇を求める結果、各艦それぞれその能力が異なるものとなって指揮・編成上の統一を欠き、たまたま個艦の優秀なるものがあるにも関わらず編隊の威力は斉一艦隊に遠く及ばないものとなっています。

財政的に決して豊ではない旧海軍においては英海軍に倣うことが不可能であるとはいえ、それでもこの原則に鑑みて建艦政策を確立していく必要があるものと認識していました。







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初版公開 : 08/Apr/2018







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