書籍名 :『日本の軍艦』
        −わが造船技術の発達と艦艇の変遷−

   著(編)者 : 福井静夫
   出版社  : 共同出版社
   初版日  : 昭和31年
   全頁数  : A5判 354頁
   ISBNコード: 4-8797-015-0

● 書籍解説

本書は、旧海軍の元技術少佐であり戦後は艦艇研究家として名を成した故福井静夫氏が、まさに艦艇研究家として世に出したその第1作と言えるものです。

とは言え、実際には巻頭言に著者が記すように、当初は昭和27年に興洋社から出版された『がわ軍事科学技術の真相と反省』シリーズの第1巻『造船技術の全貌』中の一部として収録されたもので、昭和31年になって福井氏が自己の部分のみを加筆補正の上協同出版社から出したものです。

更には、本書の大元は福井氏が技術士官としての現役時代に、後輩に対する教育参考資料とするためにまとめたもの(一説には海軍兵学校での参考資料とするためとも言われていますが、真偽の程は不明です。)と言われ、戦後新たに書き起こしたものではないようです。

内容としては、旧海軍艦艇全般に関して良く纏められており、この方面の研究における“入門書”であり、かつ今や“古典中の古典”と言えるもので、今日に至るも延々と再版が続いており、残念ながら現在でもこれに肩を並べる著作は無いと言っても過言では無いでしょう。

福井氏は本書の出版(再版)にあたり自ら “何分原書を書き改める暇がなかったので、その後の三年余の情勢の変化もあり、極めて簡単かつ不十分なものであるが、しかし内容はすべて確実な資料に基づいているから、信用していただける筈である。” と言っています。

実は、上の私の評価で “今日に至るもこれに肩を並べる著作はない” としたことも当たり前で、福井氏自身はその確実な資料を駆使しながら、他の者にはそれらの旧海軍資料をほとんど全く使用させなかったどころか、どのようなものがあるのかさえ明らかにしてこなかったからです。

それならば、“簡単かつ不十分” であることを自ら認めているわけですから、本書の改訂新版を著述してもよさそうなものですが、その意図は全く無かったようです。 福井氏が公言し続けた『日本海軍艦艇総集』のことと、後に出版された『福井静夫著作集』を考え合わせると、結局は旧海軍艦艇の真実の全貌を明らかにすることよりは、単に艦艇研究家としての売名の方が優先していたと言われても仕方が無いような気がします。




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