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Proximity (VT) Fuze Mk 53






 概 要


主として対空戦に使用する近接 (VT) 信管 で、5インチ25口径、同38口径、及び51口径砲の対空通常弾 (AAC, Anti-Air Common) に使用され、Mk 32 及び Mk40 の後継信管で、新規の製造分から本信管が装着されました。

Mod には 0 〜 6 の各型があるとされていますが、その差異の詳細は不明です。




 構造及び要目




 全  長  約 8.9 in (226 mm)
 最大径  約 3.3 in (84 mm)
 全重量  4.28 lb (1.94 kg)
 最少作動距離
 (砲口より)
 Mod 0 〜 2 : 700 yds 
 Mod 3 〜 6 : 500 yds
 有効感応距離  約 80 ft (資料によっては約 75 ft)
 電池形式  湿 式
 補助信管  Mk 44
 WSF機能  有 り
 自爆機能  無 し (後期の Mod には有り)

( WSF : Wave Suppression Feature )




 作動及び性能

  ● 作 動


1.VT信管の発砲後の一般的な作動については、『VT信管の概要』 (後日公開) をご覧下さい。

2.本信管は電源として湿式の電池を使用します。 発砲による加速によって電解液の格納容器が割れて電池内に充たされることにより電流が発生し、電子回路が作動します。 発火コンデンサー (firing condenser) への充分な充電は 0.6 〜 0.8 秒で完了します。

3.目標からの充分な強度の反射エコーを得ることにより、発火回路は発火コンデンサーを放電させて起爆薬を発火させます。

4.信管の起爆薬の発火により、補助信管の打針を作動させ、起爆薬 → 伝爆薬 → 炸薬の順に点火します。


  ● 性 能


1.最少作動距離は電池による回路作動までの秒時で決定されるため個体による差が大きく、700 yds (Mod 3 以降 は 500 yds) を保証するのは約 90 %ですが ±100 yds 以内にはほぼ収まるようです。

2.本信管の有効感応距離は約 80 ft とされていますが、米海軍の部内資料では約 75 ft としているものもあり、正確なところは判りません。 また、この有効感応範囲は信管を中心とする球形状ではないことには注意が必要です。 これについては 『VT信管の概要』 (後日公開) を参照して下さい。

3.遠距離目標に対する射撃の場合には約 10 %、近距離の場合にはそれより小さい値で、諸種の理由により目標到達以前に自爆 (早発) してしまうとされています。

4.遠距離目標に対する射撃の場合、目標に近接して有効感応距離内に入っても正常に作動するのは射距離 12200 yds (射場試験距離) で約 80 %で、近距離の場合はそれよりも高い値となります。 作動しなかったものは不発 (dud) となります。

5.WSF 機能を有しており、このため海面上約 200 ft 以上では通常の感応状態を維持しますが、これより低い場合には自動的にその感応レベルを低下させ、海面高度 10 〜 30 ft で作動しますが、これは海面の状況により変化します。 これにより低高度の雷撃機や魚雷艇などに対して効果的に使用することができますが、反面航空機に対する感応距離も減少します。

7.後期の Mod には、射距離 10000 yds での自爆 (self-destructive) 機能が付加されているとされていますが、詳細は不明です。






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最終更新 : 22/Jun/2011