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Proximity (VT) Fuze Mk 32






 概 要


主として対空戦に使用する近接 (VT) 信管 で、5インチ25口径、同38口径、及び51口径砲の対空通常弾 (AAC, Anti-Air Common) に使用されます。

Mod には 0〜10、14、16〜18、20、30、40 の各型があるとされていますが、その差異の詳細は不明です。 ただし、上図のように頭部の形状によって2つのタイプに別れます。 また51口径砲では、Mod 30 は使用されず、かつそれ以外の Mod のものでも初速 2600 ft/秒の減装薬 (常装薬は初速 3150 ft/秒) にて使用することとされています。

本信管は Mk 53 の開発と共に生産が打ち切られ、これに置き換えられました。 ただし既に艦船等へ補給された在庫分はそのまま消耗されたようです。




 構造及び要目




 全  長  約 12 in (305 mm)
 最大径  約 3.3 in (84 mm)
 全重量  6.81 lb (3.09 kg)
 最少作動距離
 (砲口より)
 Mod 0 〜 20、40 : 600 yds 
 Mod 30 : 1000 yds
 有効感応距離  約 60 ft (資料によっては約 50 ft)
 電池形式  Mod 0 〜 20、40 : 乾式
 Mod 30 : 湿式
 WSF機能  Mod 40 のみ有
 自爆機能  な し

( WSF : Wave Suppression Feature )




 作動及び性能

  ● 作 動


1.VT信管の発砲後の一般的な作動については、『VT信管の概要』 (後日公開) をご覧下さい。

2.本信管は電源として乾電池 (dry battery) (Mod 40 のみは湿式の水銀電池) を使用します。 発砲による加速によってセットバックスイッチ (set-back switch) が閉じられて電流が流れ、電子回路が作動します。 発火コンデンサー (firing condenser) への充分な充電は 0.6〜0.8 秒で完了します。

3.目標からの充分な強度の反射エコーを得ることにより、発火回路は発火コンデンサーを放電させて起爆薬を発火させます。

4.信管の起爆薬の発火により、補助信管の打針を作動させ、起爆薬 → 伝爆薬 → 炸薬の順に点火します。


  ● 性 能


1.最少作動距離は電池による回路作動までの秒時で決定されるため個体による差が大きく、600 yds (Mod 30 は 1000 yds) を保証するのは約 90 %ですが ±100 yds 以内にはほぼ収まるようです。

2.本信管の有効感応距離は約 60 ft とされていますが、米海軍の部内資料では約 50 ft とされているものもあり、正確なところは判りません。 また、この有効感応範囲は信管を中心とする球形状ではないことには注意が必要です。 これについては 『VT信管の概要』 (後日公開) を参照して下さい。

3.遠距離目標に対する射撃の場合には約 20%、近距離の場合にはそれより小さい値で、諸種の理由により目標到達以前に自爆 (早発) してしまうとされています。

4.遠距離目標に対する射撃の場合、目標に近接して有効感応距離内に入っても正常に作動するのは約 6 5%で、近距離の場合はそれよりも高い値となります。

5.Mod 40 は WSF 機能を有しており、このため海面上約 200 ft 以上では通常の感応状態を維持しますが、これより低い場合には自動的にその感応レベルを低下させ、海面高度 10〜50 ft で作動します。 これにより低高度の雷撃機や魚雷艇などに対して効果的に作動することができます。

6.Mod 40 以外の WSF 機能を有しないものは、海面反射により射距離全体を通じて平均高度約 130 ft で信管が作動するため有効な弾片効果が得られず、このため水上目標に対しては使われません。

7.Mod 40 を除き、乾式電池の問題で製造後約 8ヶ月で正常作動する信管は約 50%とされ、このため約 6ヶ月毎に工廠・工場にて電池を交換することとされています。







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最終更新 : 22/Jun/2011