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三式焼霰弾 (仮称三式通常弾)、同改一



( シブヤン海における「大和」の射撃とされる三式弾炸裂状況の空中写真 )



本弾は、仮称三式通常弾 として航空機及び基地焼夷用として計画されたもので、時計信管に調定された飛行秒時経過後に弾体内より多数の焼夷弾子を放出し、敵機又は敵基地に火災を発生させると共に、弾片により損害を与えることを狙ったものです。

昭和19年に 三式焼霰弾 として制式採用され、大口径砲から12.7糎高角砲までの次の砲種用のものがあります。 これらは砲弾の大きさや弾子の数などの違いはありますが、基本的な構造や作動原理は皆ほとんど同じです。


砲      種
  九四式四十糎砲
  四十五口径四十糎砲
  四十五口径三十六糎砲
  五十口径二号二十糎砲
  五十口径十二糎七砲
  四十口径十二糎七高角砲


この三式焼霰弾と良く似たものに「50口径十二糎七砲」及び「短二十糎砲」用の 焼霰弾、また 「短二十糎砲」「四十口径十四糎砲」及び「短十二糎砲」用の 焼夷弾 がありますが、これらについては当該頁で説明します。




 焼夷弾子

内蔵される焼夷弾子には、大口径砲用の 二十五粍弾子 と、中口径砲用の 二十粍弾子甲 及び 二十粍弾子乙 があります。


弾  子 長さ (mm) 径 (mm) 焼夷薬量 (g) 完備重量 (g) 砲   種
 25粍弾子 70 25 23 182  94式40糎砲
 45口径40糎砲
 45口径36糎砲
 20粍弾子 甲 68 20 15 115  50口径2号20糎砲
 20粍弾子 乙 50 20 10  70  50口径12糎7砲
 40口径12糎7高角砲


25粍弾子   20粍弾子乙
 


これら弾子に内蔵される点火薬及び焼夷薬(制式名称は 三号焼夷剤 甲 )成分組成(%)は、次のとおりです。


薬  種 多酸化ゴム 生ゴム ステアリン酸 硫黄 硝石 硝酸バリウム 炭素 エレクトロン屑
点火薬 13.38 5.88 0.18 10.56 65.00   5.00  
焼夷薬 10.52 4.63 0.15  0.44   28.08   56.18


この焼夷弾子の性能は次のとおりとされています。

 弾子存速が 200~300米/秒にて、4mm厚の鋼板を貫通

 弾子存速が 100~180米/秒にて、2mm厚の鋼板を貫通





 

 94式40糎砲用


本弾は「九四式四十糎砲」用であり、昭和19年「内令兵54号」によって兵器採用されました。 制式名称は 九四式四十糎砲三式焼霰弾 です。

なお同弾には 改一 があることが知られており、炸薬を装填して弾体の破片効果を付加することを狙ったものと考えられますが、詳細については不明です。


  ● 構造・作動


本弾の構造及び作動については、次の「45口径40糎砲弾」と基本的には全く同じです。



  ● 要目・性能


知られている要目及び性能は、次のとおりです。


弾  種 全 長
(mm)
弾 量
(kg)
弾子数 支柱数 炸薬量
(g)
伝火薬量
(g)
放出薬量
(g)
遅動秒時
(秒)
弾子密度
(個/m
弾子散開角 散開径
(m)
丸支柱 割支柱
三式焼霰弾 1600   1056 504 5組       0.8 0.156 15°40′ 55
三式焼霰弾改一 1360  

(注) : 弾子密度、散開角及び散開径は、射距離 6000米、弾子距離 400米における値です。






 
 45口径40糎砲用


本弾は「四十五口径三年式四十糎砲」用であり、昭和19年「内令兵54号」によって兵器採用されました。 制式名称は 四十糎砲三式焼霰弾 です。

なお同弾には 改一 があることが知られており、炸薬を装填して弾体の破片効果を付加することを狙ったものと考えられますが、詳細については不明です。


  ● 構 造


弾体は、上方に弾頭を装着し、また下方には放出薬を収納しており、弾体内部は7層に分かれてそれぞれ弾子及び支柱が導火板の上に並べられています。 1弾中には合計、弾子 735個、支柱 363個の計 1098個が納められています。 また、中央には弾頭より速火桿が貫いています。


( クリックで拡大表示します )



各層の導火板には速火線が刻まれており、この速火線は中央の速火桿に連結し、各弾子の点火薬に迅速に着火するようになっています。

弾頭は弾体上部にネジ込まれ留螺子で固定されており、その頭部には零式時限信管を装着し、信管の下には伝火薬が置かれて速火桿に繋がっています。


  ● 作 動


本弾の作動は次のとおりです。

1.弾頭に時限信管を装着して発砲します。

2.調定秒時に至ったならば信管が作動し伝火薬に点火します。 その火勢は速火桿を経由して遅延薬に移り、0.8秒経過後に放出薬を起爆させます。

3.放出盤は導火板とともに弾子及び支柱を前方に放出します。 この際、弾頭は留螺子を切断して放出します。 そして、弾子の焼夷薬に点火し、弾子は火炎を発しつつ飛散します。



  ● 要目・性能


知られている要目及び性能は、次のとおりです。


弾  種 全 長
(mm)
弾 量
(kg)
弾子数 支柱数 炸薬量
(g)
伝火薬量
(g)
放出薬量
(g)
遅動秒時
(秒)
弾子密度
(個/m
弾子散開角 散開径
(m)
丸支柱 割支柱
三式焼霰弾 1400 844 735 363 4組   1450 0.8 0.111 16°00′ 56
三式焼霰弾改一   6750




(注) : 弾子密度、散開角及び散開径は、射距離 6000米、弾子距離 400米における値です。


補足説明 :
 

ここで注意していただきたいのは、少しお考えいただければすぐにお判りのとおり、弾子密度、散開角及び散開径は弾子放出時点での砲弾の存速 (=射距離) に応じて変わる と言うことです。

即ち、射距離が短ければ存速が大きく、このため散開角及び散開径は小で、弾子密度は大となり、逆に射距離が大きくなればなるほど存速が小さくなり、 このため散開角及び散開径は大で、弾子密度は小となります。 そして存速が大きければ弾子の有効飛翔距離が長くなり、逆に存速が小さいと短くなります。

また、弾道上の弾の姿勢 (=弾体長軸の向き) に従って弾子の散開方向が変化 するとともに、信管は目標の手前で作動させる必要がありますので、目標の距離と高角に応じて弾子の散布界が目標を適切に包むようにするためには、 通常の射撃計算結果に修正を加える必要 が出てきます。

これらの実際については、後述の「40口径12糎7高角砲弾」の「対空射撃法」の項をご覧下さい。







 
 45口径36糎砲弾


本弾は「四十五口径四一式三十六糎砲」用であり、昭和19年「内令兵54号」によって兵器採用され,ました。 制式名称は 三十六糎砲三式焼霰弾 です。

なお同弾には 改一 があることが知られており、炸薬を装填して断片効果を付加することを狙ったものと考えられます、詳細については不明です。


  ● 構造・作動


弾体内部は6層に分かれており、1弾中には合計で弾子 480個、支柱 192個が納められているほかは、基本的には前項の「45口径40糎砲弾」と同じです。




  ● 要目・性能


知られている要目及び性能は、次のとおりです。


弾  種 全 長
(mm)
弾 量
(kg)
弾子数 支柱数 炸薬量
(g)
伝火薬量
(g)
放出薬量
(g)
遅動秒時
(秒)
弾子密度
(個/m
弾子散開角 散開径
(m)
丸支柱 割支柱
三式焼霰弾 1200 553 480 192 3組    2.5 930 0.8 0.063 16°30′ 56
三式焼霰弾改一 4150

(注) : 弾子密度、散開角及び散開径は、射距離 6000米、弾子距離 400米における値を示します。







 
 50口径2号20糎砲弾


本弾は「五十口径三年式二号二十糎砲」用であり、昭和19年「内令兵54号」によって兵器採用されました。 制式名称は 二号二十糎砲三式焼霰弾 です。

なお、同弾には 改一 があることが知られています。 要目・性能に示す事項以外の詳細については不明ですが、炸薬を装填し、「12糎7(高角)砲弾」と同じく弾子放出後に炸裂させて断片効果をも付加するように改善されたものであると考えられます。


  ● 構造・作動


弾体内部は5層に分かれており、1弾中には合計で弾子 198個、支柱 48個が納められているほかは、基本的には前項の「45口径40糎砲弾」と同じです。

なお、下図は米軍史料に基づく「改一」の構造図です。 弾底部の放出薬の下に炸薬と管帽薬及び第2遅延薬があり、これの作動については後述の「12糎7(高角)砲弾」と同じです。




  ● 要目・性能


知られている要目及び性能は、次のとおりです。


弾  種 全 長
(mm)
弾 量
(kg)
弾子数 支柱数 炸薬量
(g)
伝火薬量
(g)
放出薬量
(g)
遅動秒時 (秒) 弾子密度
(個/m
弾子散開角 散開径
(m)
丸支柱 割支柱 第1 第2
三式焼霰弾 860 120 198 48 2組   275 0.8   0.123 14°20′ 25
三式焼霰弾改一 123 4150 0.6 0.2

(注) : 弾子密度、散開角及び散開径は、射距離 6000米、弾子距離 200米における値です。






 
 50口径12糎7砲弾


本弾は「五十口径三年式十二糎七砲」用であり、昭和19年「内令兵54号」によって兵器採用されました。 制式名称は 五十口径十二糎七砲三式焼霰弾改一 です。

本弾は、その構造、作動、要目・性能について知られているデータは、全て次の「40口径12糎7高角砲弾」と同一です。 なお、弾丸形状などの詳細については不明です。







 
 40口径12糎7高角砲弾


本弾は「四十口径八九式十二糎七高角砲」用であり、昭和19年「内令兵54号」によって兵器採用されました。 制式名称は 四十口径十二糎七高角砲三式焼霰弾改一 です。


  ● 構 造


本弾の構造は次のとおりです。

1.弾体内部は3層に分かれており、各層の弾子及び支柱の下図は次のとおりです。
         上段 : 弾子 13個、 支柱 4個
         中段 : 弾子 12個、 支柱 6個
         下段 : 弾子 12個、 支柱 6個

2.弾体の上部に弾頭が挿入され、6個の留螺子で固定されています。 頭部には「九一式時限信管」が装着され、信管留螺子で固定されています。 また、信管の下方に伝火薬があり、更にその下部には弾子 6個が収蔵されています。

3.底栓は弾体底部にネジ入れられ、内部に炸薬及び25粍機銃信管用管帽薬を収蔵し、その上部に蓋螺がネジ入れられています。

4.蓋螺内には放出薬及び及び第2遅動薬が収納されています。



( クリックで拡大表示します )

  ● 作 動


本弾の作動は次のとおりです。

1.弾頭に時限信管を装着して発砲します。

2.調定秒時が経過したならば信管が作動して伝火薬に点火します。 その火勢は、弾体中心の速火桿を経由して第1遅動薬に点火し、約 0.2秒経過後に放出薬を燃焼させると共に、第2遅延薬に点火します。

3.放出薬の燃焼により底板は弾子及び支柱を前方に放出します。 この時、弾頭は留螺子を切断して放出します。 そして、弾子はその燃焼薬に点火して火炎を発しつつ飛散します。

4.第2遅延薬は、約 0.4秒経過後に管帽薬に点火して炸薬を轟爆させ、これにより弾体を炸裂、飛散させます。



  ● 要目・性能


知られている要目及び性能は、次のとおりです。


弾  種 全 長
(mm)
弾 量
(kg)
弾子数 支柱数 炸薬量
(g)
伝火薬量
(g)
放出薬量
(g)
遅動秒時 (秒) 弾子密度
(個/m
弾子散開角 散開径
(m)
丸支柱 割支柱 第1 第2
三式焼霰弾改一 860 24.18 43 16    200 25 0.6 0.2 0.037 12°50′ 23




(注) : 弾子密度、散開角及び散開径は、射距離 6000米、弾子距離 200米における値です。

 

  ● 対空射撃法


本弾を使用しての対空射撃における射撃要領・射撃計算法などについては、次のとおりです。


三式焼霰弾を使用した対空射撃法

(後日公開予定)





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最終更新 : 13/May/2018