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一三式信管



一三式信管は、旧海軍が開発した中〜大口径砲徹甲弾用の最後の弾底信管で、次の種類があり、一号及び二号は即動、三号から五号帽附までは遅動装置を備えています。


種   類 兵器採用年月 使   用   弾   種 遅延秒時
 一三式一号信管  大正13年8月  四十五口径二十糎砲徹甲弾改一
      同   通常弾改一
 四十五口径十五糎砲四号通常弾
      同   通常弾改一
 五十口径十四糎砲被冒通常弾改一
       同      改二
     同   一号通常弾
即動
 一三式一号信管改一  昭和16年       同      上 即動
 一三式一号信管改二     0.03秒
 一三式二号信管  大正14年10月  五十口径三年式二十糎砲被冒徹甲弾 0.08秒
 一三式三号信管  大正15年4月  六十口径十五糎五砲九一式徹甲弾 0.2秒
 一三式四号信管  昭和3年5月  五十口径三年式二号二十糎砲九一式徹甲弾
 五十口径三年式二十糎砲八八式徹甲弾
0.4秒
 一三式四号信管改一  昭和7年4月       同      上 0.4秒
 一三式五号信管  昭和16年10月  九四式四十糎砲九一式徹甲弾
    同   一式徹甲弾一、二、三、四型
0.4秒
 一三式五号信管(帽附)  昭和17年1月  四十糎砲九一式徹甲弾
   同 一式徹甲弾一、二、三、四型
 三十六糎砲九一式徹甲弾
   同  一式徹甲弾一、二、三、四型
0.4秒
 一三式五号信管(帽附)(即動用)     即動
 一三式十一号信管  昭和20年2月    


なお、「帽附」 とは、既製の弾丸に対してこの信管を使用するため、下図のように信管と炸薬信管孔との隙間を埋めるために木製の帽を用いることを意味し、新規に製造する弾丸には使用しません。





 

 一三式一号信管

  概 要


本信管は大正13年に制式作用された本シリーズの最初の型式です。 構造及び作動については、基本的に次の 「一号信管改一」 と同じですので、両者の相違点も含めて当該項目で説明いたします。




  要 目


知られている要目は、次のとおりです。


   全長          : 138 mm

   本体長(管帽を除く)  : 80 mm

   最大径         : 48 mm

   全重          : 955 g



品  名 薬  種 薬  量
雷  管  雷こう   約 1.4 g
管 帽 薬  下瀬火薬  約 20 g 






 

 一三式一号信管改一

  構 造


管体、管帽、底栓、管帽薬、雷管、撃針、遠心子、安全栓、安全栓発條 (バネ)、安全留針等で構成されています。


1.撃針は雷管を打撃するために頭部が尖鋭になっており、下部に鍔があって遠心子の拘束部となっています。

2.遠心子 (5個) は、それぞれ一方を軸が貫通して、その頭部が隣接する遠心子の脚部を抑えるように連結されており、撃針の鍔部を拘束しています。

3.安全栓は安全栓発條の中に収納され、頭部は第1遠心子の外側に突出しており、遠心子が開放しないように拘束しています。 その下部には段があって、発砲の衝撃により安全栓が後退した時に、安全栓発條がここに懸かるようになっています。

4.安全栓発條は、下部に4本の爪形発條を有する円筒で、内部に安全栓を収めています。

5.安全留針は、安全栓の下部に挿入され、安全栓が不用意に下降しないように防止するためのものです。






なお、原形である 「一号信管」 との相違点は、次の2点です。


1.雷管に使用する雷こう(雷酸水銀)が保管中に劣化 (分解) するため混合薬に変更されました。

2.安全留針が不可抗力によって脱落しないようにな形状に改良されました。



  要 目


知られている要目は、次のとおりです。


   全長          : 138 mm

   本体長(管帽を除く)  : 80 mm

   最大径         : 48 mm

   全重          : 957 g



品  名 薬  種 薬  量
雷  管  発薬(三味)
 窒化釦   
 テトリール 
 約 0.13 g
 約 0.1 g
 約 0.1 g
補  薬  テトリール  約 0.1 g
管 帽 薬  下瀬火薬  約 20 g 


  作 動


次の順序で作動します。


1.安全留針を抜き、弾底に装着します。

2.発砲すると、慣性によって安全栓が安全栓発條を押し広げて降下し、その下部の段に安全栓発條の爪が懸かると安全栓は上昇することが出来なくなって、これにより遠心子の拘束を解きます。

3.弾丸の旋転力に伴って遠心子は遠心力によって第1、第2 ・・・ の順に外側に開き、撃針の鍔部の拘束を解きます。

4.弾丸が物体に当たると、慣性により撃針が雷管を叩いて発火させ、その火勢で管帽薬に点火して炸薬を轟爆させることにより弾丸を炸裂させます。







 

 一三式一号信管改二

  概 要


本信管は試作のみで、制式採用には至らなかったとされています。 14糎及び15糎砲用で、0.03秒の遅延を掛けるために構造が変更され、また管帽薬が下瀬火薬 約30gに増加しています。




なお、この遅延機能付きの形式の基本的な構造及び作動については下の 「五号信管」 の項で説明します。






 

 一三式二号信管

  概 要


本信管は大正14年に制式作用された50口径三年式20糎砲用のものです。




  要 目


知られている要目は、次のとおりです。


   全長          : 不明

   本体長(管帽を除く)  : 不明

   最大径         : 48 mm

   全重          : 1373 g



品  名 薬  種 薬  量
第1雷管  発薬(三味)
 黒色粉薬   
 約 0.035 g
 約 0.015 g
伝 火 薬  黒色細粉薬  
遅 動 薬  黒色粉薬  
点 火 薬  黒色細粉薬  
第2雷管  窒化釦
 テトリール
 約 0.35 g
 約 0.45 g
補  薬  テトリール  約 2.17 g
管 帽 薬  下瀬火薬  約 27 g






 

 一三式三号信管


  概 要


本信管は、大正15年に制式採用された、大口径 (40糎及び36糎) 砲の 「五号徹甲弾」 用及び60口径15糎5砲の 「九一式徹甲弾」 用のものです。




  要 目


知られている要目は、次のとおりです。


   全長          : 不明

   本体長(管帽を除く)  : 不明

   最大径         : 48 mm

   全重          : 1373 g



品  名 薬  種 薬  量
第1雷管  発薬(三味)
 黒色粉薬   
 約 0.035 g
 約 0.015 g
伝 火 薬  黒色細粉薬  
遅 動 薬  黒色粉薬  
点 火 薬  黒色細粉薬  
第2雷管  窒化釦
 テトリール
 約 0.35 g
 約 0.45 g
補  薬  テトリール  約 2.17 g
管 帽 薬  下瀬火薬  約 29 g






 

 一三式四号信管、四号信管改一

  概 要


「四号信管」 は、昭和3年に制式作用された 「50口径三年式20糎砲」 の 「八八式徹甲弾」 及び 「50口径三年式2号20糎砲」 の 「九一式徹甲弾」 用、また 「四号信管改一」 は大口径 (40糎及び36糎) 砲の 「八八式徹甲弾」 及び 「九一式徹甲弾」 用 (当初) の、弾底着発信管としてそれぞれ使用されました。

なお、「四号信管」 と 「四号信管改一」 の相違点などの詳細については不明です。




  要 目


知られている要目は、次のとおりです。


   全長          : 不明

   本体長(管帽を除く)  : 不明

   最大径         : 48 mm

   全重          : 1355 g



品  名 薬  種 薬  量
第1雷管  発薬(三味)
 黒色粉薬   
 約 0.035 g
 約 0.015g
伝 火 薬  黒色細粉薬  
遅 動 薬  黒色粉薬  約 0.08 g
点 火 薬  黒色細粉薬  約 0.9 g
第2雷管  窒化釦
 テトリール
 約 0.35 g
 約 0.45 g
補  薬  下瀬火薬  約 2.17 g
管 帽 薬  下瀬火薬  約 29 g







 

 一三式五号信管


この信管は、「九四式四十糎砲」 の 「九一式徹甲弾」 用として開発され、昭和16年に制式採用された旧海軍最後の大口径砲徹甲弾用の着発遅延信管です。 なお、トップの一覧表にありますように、40糎及び36糎砲の 「九一徹甲弾」 用としても前記 「四号信管改一」 に替わり使用されました。

  構 造


基本的には即動の一三式一号信管改一と同じですが、遅延機能を付加するため次の点が異なります。


1.雷管を2個使用しています。

2.第1雷管と第2雷管との間に伝火薬、遅動薬、点火薬などが置かれています。




弾丸の底螺に装着した状態は、次のとおりです。


  要 目


知られている要目は、次のとおりです。


   全長          : 138 mm

   本体長(管帽を除く)  : 80 mm

   最大径         : 48 mm

   全重          : 1289 g



品  名 薬  種 薬  量
第1雷管  発薬(三味)
 黒色粉薬   
 約 0.04 g
 約 0.014 g
伝 火 薬  黒色細粉薬
遅 動 薬  黒色粉薬  
点 火 薬  黒色細粉薬  約 0.4 g
第2雷管  窒化釦
 テトリール
 約 0.1 g
 約 0.24 g
補  薬  テトリール  約 0.1 g
管 帽 薬  下瀬火薬  約 21 g

  作 動


次の順序で作動します。


1.安全留針を抜き弾底に装着します。

2.発砲すると、慣性によって安全栓が安全栓発條を押し広げて降下し、その下部の段に安全栓発條の爪が懸かると安全栓は上昇することが出来なくなって、これにより遠心子の拘束を解きます。

3.弾丸の旋転力に伴って遠心子は遠心力によって順次外側に開き、撃針の鍔部の拘束を解きます。

4.弾丸が物体に当たると、慣性により撃針が第1雷管を叩いて発火させます。

5.第1雷管の火勢は伝火薬に点火し、次いで遅遠薬に移り、点火薬柱を経て点火薬に点火し、これにより第2雷管を発火させて、補薬を経て管帽薬を轟爆させることにより弾丸を炸裂させます。






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 最終更新 : 10/Jan/2009