書籍名 :『大海軍を想う』

   著(編)者 : 伊藤正徳
   出版社  : 文藝春秋新社
   初版日  : 昭和31年
   全頁数  : A5判 544頁

● 書籍解説

本書は、戦前から軍事記者として活躍した伊藤正徳氏が戦後になって『聯合艦隊の最後』に続いて世に出したもので、旧海軍の一般史としては “古典中の古典” です。

確かに今日的な視点からすると、多少記述に甘いところが散見されます。 例えば、日本海海戦におけるかの有名な「東郷ターン」の記述では、

 「 しかしながら、それは非常なる冒険でもあった。「三笠」が転回した同一地点を後続の11隻が転回するのであるから、敵の測距照準に誤りがなければ、各艦はその運動中に、演習の標的の如くに撃たれるであろう。言い換えれば、敵は何発か撃って正確な距離を発見し、そこへ連続的に弾丸を打っておれば、日本の11隻の軍艦が自動的に命中点に現れて、自分の方から当たって来るといった格好だ。 こんな危ない運動はあるまい。」

と言っていますが、これは誤りであって、そのようにはならないことは私のホームページの読者の方々には簡単にお解りいただけるでしょう。

とは言え、これが出版された頃は旧海軍史に関するまともな書籍は全くと言って良いほど無く、私がまだ10代の頃この本を手にした時には一心不乱で貪り読んだことを今でも覚えています。

全体を通して伊藤氏の旧海軍に対する愛情に溢れた一つの “叙事詩” に仕上がっており、今日に至るもこれを上回るものは無いと言っても過言ではなく、その意味ではまさに “名作中の名作” です。




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