書籍名 :『海軍艦艇史1−戦艦・巡洋戦艦』 著(編)者 : (福井静夫) 出版社 : K.K.ベストセラーズ 出版日 : 昭和49年 全頁数 : A4版 434頁 書籍コード: 0072-211013-7617 |
● 書籍解説
本書籍は、元海軍技術少佐であり戦後は艦艇研究家として名を成した故福井静夫氏の写真集『海軍艦艇史』シリーズの第1巻です。 本シリーズは次のような全5巻が予定されていましたが、書籍リストのとおり遂に第3巻までしか刊行されませんでした。
第1巻 : 戦艦・巡洋戦艦
第2巻 : 巡洋艦、スループ、コルベット
第3巻 : 航空母艦、水上機母艦、水雷・潜水母艦
第4巻 : 駆逐艦、水雷艇、その他 (未刊)
第5巻 : 潜水艦、特務艦、その他 (未刊)
本巻を含め刊行された3巻は各巻とも全て大変素晴らしいものです。 これは事実です。 したがって、今では古書でしか手に入りませんが、お持ちでない方は今からでもお金を出して古書店で購入する価値は十分にあります。
と言うよりは、他には大した旧海軍艦艇写真集は出版されていないということです。 その理由ははっきりしています。 故福井氏が公的なものも含め旧海軍艦艇に関する主要な史料を独占してしまっていたからであり、他の研究家の人達はそれを十分に活用することができませんでしたから、当然といえば当然のことです。
第1巻の福井氏の巻頭言によると、どうもこのシリーズを彼が公言した『日本海軍艦艇総集』の写真の部とするつもりだったようです。 艦艇写真はもちろんのこと、搭載兵器の諸元データなどの艦艇関係諸資料も適宜掲載されるはずでした。 しかし、この関係資料公表も全く実現しませんでした。 氏の周りにいた関係者によりますと、氏の健康思わしくなく第3巻以降の刊行は不可能となったとのことで、それで替わりに『写真 日本海軍全艦艇史』、俗に言う「68K本」を出版したとのことです。
私は皆さんに是非本シリーズ既刊3巻と「68K本」の当該ページを比較していただきたいと思います。 年代的な印刷技術等の問題からする“綺麗さ”はともかく、内容的にその差は歴然としていることは即座にご理解いただけるでしょう。 では何故残りの2巻を出さずに、このようなつまらない「68K本」などを出したのでしょうか? 私には理解できませんし、納得がいきません。
福井静夫氏は、世間に対して月刊誌『世界の艦船』昭和33年3月号上で氏のライフワークとして『日本海軍艦艇総集』の編纂・刊行を目指すことを公言して以来、約半世紀近く最後まで一貫してそれを言い続けてきました。 一方で、その途中成果と称して写真集だけでも本シリーズを含み何種類かを出版し、氏の保有する旧海軍艦艇写真等を小出しにしてきました。 私たちはその都度決して安くはないお金をそれに投資してきました。 そして氏が公言し続けてきた『日本海軍艦艇総集』はその全貌を明らかにされるこのないまま、遂に永遠の闇に葬られてしまいました。 いったいこれは何だったのでしょうか?
したがって、私は「68K本」は絶対に自分のお金を出しては買いません。 (私に寄贈してくださる奇特な方がおられましたら、有難く頂戴し、末永く史料庫に収蔵いたしますが・・・・)